間に合わなかった装備 ~ 東ドイツ軍 レインドロップ迷彩・UTV装備 [1990年代・想定]

この装備は東ドイツ軍こと国家人民軍の最新装備で、一般に「UTV装備」の名称で知られているものです。

このUTV装備は、1987年から更新が開始されたらしく、全軍への配備がほとんど進まないうちに、1989年には東西ドイツ統一で、国家人民軍は消滅してしまいました。

 

 

そのため、製造されながらも支給されなかったデッドストック品が工場に山積みという状況で、ほどなく遠く海を離れた日本で投げ売り状態になるのでした。

ろくに情報もない中、実物のみ大量に流通していたので、使い方もわからないまま安さに任せて購入した方も少なくないかと思います。

 

 

東ドイツ軍のレインドロップ迷彩服の中でも、これは最後期型になります。

UTV装備のご多分に漏れず、殆ど配備が進まないままに国が無くなってしまった悲劇の装備です。

 

 

デザインは同時代のソ連地上軍で支給がすすめられていた「1981年型野戦服(通称:アフガンカ)」の流れを汲んだもので、大型のカーゴポケットが4つと、小ポケットが両腕部にあります。

 

 

迷彩服の内装はわりあいシンプルで、従来の迷彩服のような内ポケットもありません。

 

 

腰には締め紐が内蔵されています。

 

 

襟の内側には圧縮紙製ボタンがあり、襟布を取り付けられます。

 

 

襟布は、第二次世界大戦当時のドイツ国防軍で使われていた「クラーゲンビンデ」とほぼ同型で、制服に合わせたマウスグレーの裏地に白色綿の襟布が縫い付けられています。

ソ連軍や旧日本軍では糸で縫い付け、洗濯の度に縫い直す仕様なので面倒ですが、ドイツ軍はボタンによる脱着式なので実用面で大変便利です。

 

 

グレーの裏地部分にボタンホールがあり、襟にボタン留めします。

東ドイツ軍の迷彩服は開襟での着用例が多いですが、襟布が第1ボタンあたりまで来るので、開襟状態でも綺麗に着こなすことができます。

 

 

迷彩服の各ボタンはグレーのプラスチック製です。

ポケットの蓋の裏地は薄手の化繊で柔らかく、楽にボタン留めできます。

 

 

左上腕部、小ポケットの上にボタン付きのタブが設けられています。

ここにUTV装備と共に採用された新型階級章を装備します。

 

 

新型階級章は裏地が筒状になっており、タブを通してボタン留めで固定します。

 

 

新型野戦服では肩章を廃止し、袖章で階級を表すように改められました。

ちょうど、第二次世界大戦当時のドイツ国防軍における「迷彩服用階級章」を彷彿とさせるデザインです。

なお、画像の袖章の階級は「軍曹」です。

 

 

迷彩服と対になる迷彩ズボンも、やはりUTV装備の新型デザインですが旧来のズボンとのデザイン上の差異は少なく、ちょっとしたアップデート版といった印象です。

 

 

中厚手のコットン・化繊混紡布地の肌触りがよく、規定ではズボン下を履いている事もあり、少し肌寒い位の季節が最も着心地が良い印象です。

 

 

小物入れ用の切れ込みポケットの直下にカーゴポケットが設けてあります。

また、アメリカ軍の「BDU」のような尻ポケットはありません。

 

 

ウエスト周りにはゴムが内蔵されており、フィット感があります。

 

 

東ドイツ軍専用のズボン吊りサスペンダー用の金具がある他、従来の迷彩ズボンには無かったベルトループが追加されており、機能性が向上しています。

 

 

迷彩ズボンのカーゴポケットも、ジャケットと同じ作りです。

 

 

ポケットには大きめのマチが設けてあり、荷物を多く収納できるよう工夫されています。

 

 

ポケットの内張りは薄手の化繊が使われています。

ポケットに手を入れた時の滑りがよく、地味によく出来ているなと感心します。

 

 

迷彩ズボンの裾はボタン留め式です。

ボタンは、ブーツの上から留めるのに丁度良い配置になっています。

 

 

迷彩ズボンのサスペンダーの取り付けは画像のようになります。

新型野戦服から追加されたベルトループも確認できるでしょうか。

 

 

UTV装備の一貫として採用された迷彩帽です。

 

 

ソ連地上軍のアフガンカ帽に続いたかのように、つば付き作業帽スタイルで、従来の略帽より取り扱いやすく、迷彩服との親和性も高いのでお気に入りの装備です。

 

 

帽子の正面には国家章の下のスペースに階級章を縫い付けています。

この迷彩帽も、かつてはミリタリーと関係無い輸入雑貨の店などでも見かけるほど大量に市場に流通していました。

 

 

新型迷彩服を着用した状態です。

着用してみた印象は、つば付きのフィールドキャップも相まって「着心地の良いアフガンカ」といったところでしょうか。

UTV装備では黒革製編上靴も採用されていたようなので、アメリカ軍の戦闘靴のレプリカ品でプチ再現しています。

 

 

背中側の様子ですが、腰周りは内蔵紐で絞ってフィット感を上げた状態です。

編上靴を履いていますが、長靴と同様、靴の上からズボンの裾をボタン留めしています。

 

 

装備の組付け方法は、ベルトループを通した上でワイヤーフックを使ってずれないように固定するというもので、イギリス軍の「P58装備」によく似ており、特に装備ベルトは本体構造、バックル形状共、酷似しています。

 

 

装備の組み方は、ネット情報と書籍から得た情報をもとにしています。

同時代のアメリカ軍の「ALICE装備」に比べると、組み立て難く外し難い、すなわち組み上げるのに時間がかかり、機能性では劣ると言わざるを得ませんが、それでも以前のグレー・ナイロン装備に比べると、使いやすくなっているのがわかります。

 

 

組立てに手間のかかるUTV装備ですが、一旦組み上げてしまえば、激しく動いても装備品の位置がズレないので装備一式の脱着も容易です。

 

 

また、着用してゲームをしてみると、全体に軽量で身体への負担が少ない等、はっきりと性能が向上しているのがわかります。

武装は、UTV装備の配備予定時期を想定して、東ドイツ製AK-74である「MPi-AK-74」を合わせてみました。(と言っても、AK-74の電動ガンで代用しておりますが…)

 

 

ヘルメットは東ドイツ軍特有の三角系に近いデザインの物で、日本の陣笠を思わせます。

 

 

「M56ヘルメット」の名称ですが、内装の違いから前期型のB1型と後期型のB2型があります。

 

 

私が所有している物は後期型に当たります。

 

 

内装・顎紐共、茶革製で安定性も高くかぶり易いヘルメットです。

 

 

画像ではレインドロップ迷彩ヘルメット・カバーを装着しています。

 

 

東ドイツ軍のヘルメット・カバーには、顔面擬装用のナイロン製フェイスベールと、首筋を日差しから守る帽垂れがあり、必要に応じて内蔵・展開が可能です。

 

 

ヘルメット・カバーの中身は「パレード用」と言われる、軟質プラスチック製の物を使用しています。

 

 

スチール・ヘルメットよりもはるかに軽量で、相応の頑丈さがある為、サバイバルゲームで重宝しています。

 

 

UTV装備の中でも特徴的なのが携帯ショベルの携行方法で、旧装備と異なり、柄を上にして装備するようです。

ショベルカバーのベルトループも、そのような方向に縫製されています。

 

 

サスペンダーに縫い付けられているナイロン紐は、ショベルの柄がバタつかないように結んでいますが、この使い方は推測に基づくものです。

とかく、正確な運用方法が不明瞭なUTV装備なので、ネット情報も100%鵜呑みに出来ないのがモヤモヤしてしまうところですね。

 

 

身体前面にはマガジンポーチとガスマスクバッグが装備されます。

見ての通り、ガスマスクバッグはかなり嵩張りますが、それでも旧装備のように自重で位置がずれない分、扱いやすくなっています。

後に気が付いた点ですが、どうやらベルト・バックルの横に手榴弾ポーチを配置し、次にガスマスクバッグを装着するのが正規の位置らしいです。(海外のコレクターの方から指摘を受けました)

 

 

東ドイツ製AKシリーズ用マガジンポーチは基本構造は旧型装備と大差ありませんが、蓋の固定用ストラップの構造がUTV仕様に一新されています。

 

 

ちょうど、イギリス軍のP58装備や、アメリカ軍のM56装備のようなクイックリリースタイプが採用されており、素早い取り外しができます。

 

 

マガジンポーチにはAKタイプ・マガジンが4本収納出来ます。

ポーチ内部は多少の余裕があり、画像のAK-74用はもちろん、AK-47用マガジンも収納可能です。

 

 

ガスマスクバッグは旧装備の防水グレー素材の物と違い、レインドロップ迷彩で擬装効果を高めている他、背負い紐や腰紐を無くし、装備ベルトに直接装着するようになりました。

 

 

UTV装備のガスマスクバッグには大別して「フィルター直結型ガスマスク用」と「吸収缶分離型ガスマスク用」の二種類があり、それぞれ内部構造が異なります。

私の所有物は分離型用なのでバッグ内部にキャニスター缶収納用スペースが設けられています。

 

 

身体左脇方向に手榴弾ポーチを装備しています。

 

 

手榴弾ポーチは仕切りがしてあり、小型の手榴弾を3個収納できます。

 

 

ただし、社会主義圏で一般的なソ連製F-1手榴弾やRGD-5手榴弾はサイズが合わず収納できません。

 

 

東ドイツ軍の手榴弾については詳細がわかりませんが、1981年からソ連で配備が始められた新型小型手榴弾「RGO」「RGN」のライセンス生産品もしくは輸入品が、サイズ的に対応しているようです。(ソ連製RGO/RGN手榴弾ポーチは東ドイツ軍手榴弾ポーチとよく似ています)

 

 

これは本来の用途とは異なる、サバイバルゲーム向けの裏技的使い方ですが、三つの区切りの内、両端のポーチを利用してSVDドラグノフ狙撃銃のマガジンを2本収納することが出来ます。

 

 

SVDドラグノフ狙撃銃は東ドイツ軍でも運用されていましたが、専用のマガジンポーチの存在は私は知識不足で知らない為、応用としては悪くない使い方かな、と思っています。

 

 

身体右側面には水筒を提げています。

 

 

この水筒は、かつて「防寒用水筒」の名称で流通していたものですが、最近の情報ではUTV装備に合わせ改良された新型水筒とされています。

 

 

従来の水筒は透明ポリ製の本体を迷彩カバーに収納してありましたが、新型水筒は本体をウレタンで覆ったものをビニールっぽい素材のストラップで吊り下げて装備します。

 

 

ウレタンで覆うことで多少の保冷・保温効果があるようです。

ウレタン外装には柔軟性があり、強く押してみるとプニプニします。

 

 

付属のカップは旧型水筒と同じくアルミ製で、艶消し塗装されていますが、やはりというか塗膜が弱くて爪でひっかくだけで剥がれてくる始末です。(東ドイツ人は塗装の剥がれに無頓着?)

 

 

総じて使いやすくなっているUTV装備の中で、このミトン(手袋)だけは非常に勝手が悪いです。

ミトンの造り自体は凝っていて、手のひら部分は耐久性と滑り止めを兼ねてか裏革が貼り付けてあり、ミトン内部は起毛仕立てで肌触りもよく、外側は厚手のコットンで丈夫に作られています。

 

 

防寒目的で支給される物なのでしょう、風は全く通さず暖かいのはいいのですが、素材が硬い上に指が三ツ又にわかれているのみで、ろくに物も掴めない始末です。

 

 

銃を構えるにもしっかり保持できず、勿論、引き金を引くのも一苦労なので、サバゲーではハッキリ「使えない」と言い切っていいでしょう。

なお、情報不足でこのミトンが本当にUTV装備の一つなのか、以前から使用されていた物か判然としませんので、曖昧情報である事をご了承ください。

 

 

サバイバルゲームにて、戦闘中の画像です。

 

 

着ている本人は気づかない物ですが、レインドロップカモは遠目には単色に見えますね。

 

 

迷彩パターンとしては単調ですが、対戦相手や戦友から聞く限り、それなりに迷彩効果はあるようです。

 

 

枯れ草の多い秋冬時期には良く効果を発揮する装備と言えそうです。

 

 

また、個人装備の進化という点では、旧型グレーナイロン装備よりも、装備品がズレたりせず軽量化も実感でき、「さすが新型!」と感心しました。

 

 

最新情報をチェックしよう!