今回紹介するのは、第二次世界大戦後のソ連空挺軍で使用されていた空挺降下服です。
いわゆるつなぎ服で、落下傘降下時に着用するための被服です。
空挺部隊が落下傘降下時に使用する被服としては、つなぎ服は世界的にもメジャーな物ですね。
ただ、アメリカを中心とする西側陣営は、戦後早い段階で戦闘服と装具の組み合わせに移行しており、比べてみるとつなぎ服は若干古臭い印象を受けがちです。
基本的な形状は第二次世界大戦当時から変わっておらず、使用期間も戦後まもない頃から、ソビエト・アフガン戦争初期まで、長期間に渡って運用されているのが、当時の記録画像から確認できます。
降下服の全体です。
落下傘が絡む事故を防ぐため、全体にシンプルな形状です。
色味は製造時期にもよると思われますが、M69常勤服など、一般的なソ連軍服と同じカーキ色です。
襟は折襟型で、針金製のホックが付いており、隙間なくしっかりと留めることができます。
第1ボタンを外して開襟にした状態です。
記録映像では、このくらい前をはだけて、空挺軍特有の青白縞々のボーダーシャツが見えるように着こなしている例が多く見られます。
前合わせは5個の樹脂製ボタンで留められます。
つなぎ服らしく、着脱が容易になるよう、大きく広げることができます。
襟内側には、引っ掛けループが縫い付けられています。
外側から見ると、縫い目の様子から、内ポケットの存在が確認できます。
左胸に内ポケットが設けてあります。
ボタン留めフラップが付いており、脱落防止対策もしっかりしてあります。
単純な貼り付けポケットなので、収納力に乏しく、使いどころはメモや手帳程度でしょう。
袖はポケット等のない、シンプルなものです。
袖口はゴム入りで、自然と手首にフィットします。
左太腿に、貼り付け式ポケットが1個設けてあります。
ポケットはフラップ付きで、2箇所のボタンで閉じられます。
ボタンは樹脂製で、オリーブ色の成形色で作られています。
色・形状・素材ともに、ソ連製被服で頻繁に見られる同一規格品です。
内ポケットと同じく、容量は少ないので使用方法は限られます。
ズボンは、膝に菱形の当て布による補強がされています。
ズボンのすそは筒型で、ボタン留めできるようになっています。
ボタンは2つあり、サイズ調節ができます。
最大サイズで留めた状態です。
黒革製長靴の上から被せるように着用する際の位置です。
最小サイズで留めた状態です。
編み上げ式戦闘靴に裾をたくし込むように着用する際の位置です。
背中側の全体形状です。
ポケット等のない、シンプルな形状です。
腰の部分はボタン留めされています。
ボタンを外す事で、上下に大きくはだけることができ、用便時に配慮した作りになっています。
裏面にタグ・スタンプが確認できますが、だいぶ薄くなっており、詳細が読み取れないのが残念です。
袖を背中側から見たところです。
膝と同様、ひじにも当て布が縫い付けてあり、強度を高める工夫が見て取れます。
ひざの菱形と比べて、縫製の違いが面白いところ。
降下服と降下帽を着用した状態です。
空挺軍でも、靴は革製のブーツを使用しています。
有事には、この上からRD-54空挺背嚢一式を着用し、落下傘を装着して完成となります。