国家人民軍(東ドイツ軍)で広く使われた個人携行用シャベルです。
第二次世界大戦以来のデザインを継承したこのシャベルは、人民軍創設期から国家の終焉まで長きに渡り使用されました。
この個体はシャベル・ブレードの状態から殆ど使用されていないように見えます。
ブレードには製造刻印が見られます。
ブレードの片側のみノコ型に成形されており、木の根を切断する時に便利です。
金属部分は木柄に被せてリベットで留めてあります。
木柄の先端は丸く成形されています。
諸外国製に見られる穴は開けられていません。
この携帯シャベルは折り畳み式で、ブレードの固定用キャップは樹脂製です。
画像のようにキャップを回して緩め、ブレードの角度を変える事が出来ます。
ブレードを90度回転させればクワとして使えます。
シャベルを折りたたんだ状態です。
この状態でシャベル・カバーに収納し、腰に吊るして携行します。
付属のシャベル・カバーです。
東ドイツ軍のシャベル・カバーとしては最も一般的に使われたと思われる黒革製モデルです。
大まかな形状は第二次世界大戦当時の物に準じた作りです。
同時期のドイツ連保軍(西ドイツ軍)でも、類似形状の物が使用されており、分割されても同じドイツなんだな、と感じます。
側面から見ると、充分な厚みのある革素材が使われており、軍用に耐える作りが見て取れます。
装備ベルトへの装着はベルトループによる、昔ながらのシンプルな構造です。
シャベル収納時は両端のフラップが蓋となり、脱落を防ぎます。
フラップは革製品でよく見られるギボシ金具による開閉方式です。
フラップを開放した状態です。
フラップ部分は画像のように開きます。
フラップ基部をリベットでカシメ留めされており、シャベル携行時に取り出し・収納しやすいように、ある程度可動するようにデザインされています。
シャベルは画像のように上から差し込むように収納します。
しっかり押し込むことできれいに収納出来ます。
シャベル携行時の状態です。
第二次世界大戦当時の折り畳みショベルと比べて柄が短くなっているのでコンパクトな印象を受けます。
シャベルのブレードの黒塗装と黒革製カバーの組み合わせは精悍で格好良いです。
シャベル・カバーはフチもしっかり縫製されており強度面の不安は感じません。
ベルトループ部分も各部にリベットが使われており、耐久性と生産性に配慮されています。
東ドイツ軍の携帯シャベルは手元に2個所有しているので並べて比較してみました。
同じアイテムなので当然ですが、形状の違いは殆どありません。
一番の相違点はシャベル・ブレードの固定キャップ部分で、素材も形状も異なります。
シャベルの傷み具合から見ても、左の方が製造年代が古い物と思われます。
ブレード部分はどちらも塗装の剥離や錆が見られますが、右は実用はされていない保存状態による劣化、左は実用された中古品という違いがあるようです。
かつては価格の安い軍用シャベル筆頭だった東ドイツ製も、現在はあまり見かけなくなり時代の流れを感じます。