今回紹介するアイテムは、中田商店から販売されていた「日本陸軍 下士官刀帯」の複製品です。
常に在庫のある商品ではありませんが、稀に再販される事があり、同型の海外複製品と並んで日本軍装趣味者にとってありがたいアイテムです。
「下士官刀帯」という名称は中田商店での商品名ですが、実は下士官用ではありません。
私も長らく知らなかったのですが、この形状の刀帯、実は明治時代に制式化された「将校略刀帯」なのだそうです。
使用は陸軍の軍服が詰襟の時代の終焉(昭和初期)まで続けられたようで、以降は「旧型刀帯」と呼ばれていたようです。
下士官が使用する事もあったようですが、軍の制式としては下士官は「兵用帯革(装備ベルト)」に通す彼方を吊るすための金具、通称「日の丸環」を使用しました。
前述のような名称の間違い(勘違い)が起こった背景には、中田商店で日本軍装備の複製品製作が始められた時期には現在よりも日本軍装備の研究が進んでいなかった事、時代背景的にも過去の戦争が身近すぎて研究対象とされる事が少なかった事が考えられます。
現在も日本軍装備を知る上で有力な情報資料である、中西立太氏の著作「日本の軍装・改訂版(大日本絵画・刊)」においても、この形状の装備品が「下士官用刀帯」と記載されています。
中西立太氏は、自力で日本軍各種教範や実物軍装品を収集・研究し、画家としての能力を生かした啓もう活動を行った日本軍研究の第一人者であり、現在の進んだ軍装研究のスタートラインを築かれた偉人です。
中田商店の複製品は海外(恐らく中国)の工場で作られており、製造ロットによって皮革の質や縫製による出来の良し悪しが少なからずあります。
私の購入したロットは“当たり”だったようで、非常に満足のいくクオリティです。
下げ尾先端には軍刀の佩環(リング)に連結する為のナスカンが取り付けてあります。
実物は将校が自費調達する物なので、個体差が大きいですが、ロック機構のない金具が主流のようです。(もちろん、ナスカン式もあります)