国家人民軍(東ドイツ軍)の装備ベルトです。
このベルトは歩兵の個人装備として広く使われた物で、わずかに青みがかった灰色のナイロンで出来ています。
デザインは第一次世界大戦以来のプロイセン軍のデザインを踏襲した物で、紋章のレリーフが彫られた箱型のバックルが特徴的です。
国家人民軍創設からしばらくの間、1950年代までは従来のドイツ軍装品と同じく黒革製ベルト及び各種装備品が支給されていました。
1960年代に入ると、新素材のナイロンを導入した新型装備に一新されて、1980年代末期まで続く“冷戦(コールド・ウォー)”を通じて東ドイツ軍のイメージを決定づけました。
それでは細部を見ていきたいと思います。
装備ベルト本体はナイロン編みで、非常に頑丈な作りです。
厚みは革製ベルトと比べるとかなり薄っぺらいですが、丈夫なナイロンを使っている為、ベルト自体の強度はしっかり保持されています。
また、民生品に使われているナイロン素材と比べると表面の艶が目立たないのが軍用品らしいポイントでしょうか。
装備ベルトの連結は箱型バックル式で、外見は大戦型装備を踏襲した物です。
箱型バックル式の装備ベルトは第二次世界大戦の頃はドイツに限らず、ヨーロッパ各国で見られた普遍的なスタイルでした。
バックルにはフックが設けてあり、ベルト端末の金具に引っ掛けて着装します。
基本的な構造は第二次世界大戦当時のドイツ国防軍の物と同様ですが、フックと引っ掛け金具の位置が逆になっているのが興味深いです。(なお、東ドイツ軍初期装備の黒革ベルトは大戦当時とほぼ同型です)
ベルトのサイズ調節方法は大戦型と大きく異なる点で、ナイロン製のベルト本体をバックルに設けられた軸で折り返して固定します。
この構造とバックルのフックの位置は、同時期のソ連軍の装備ベルトに酷似しており、新型ベルト開発の際にソ連軍に倣って構造のアレンジが行われた物と推測されます。
バックルにはドイツ民主共和(東ドイツ)国章がレリーフ状にモールドされています。
また、バックル表面はベルト本体に合わせて同系色で塗装されています。
バックルの裏面は塗装はされておらず、ベルト連結用フックが溶接されています。
装備ベルト端末・表面の形状です。
装備ベルトの端末には、金属製のバックル・フック引っ掛け用金具がカシメ留めされています。
装備ベルト端末・裏面の形状です。
ナイロン製のベルトの端末は、熱で溶ける素材の特性を生かしてほつれない様に焼き止めされています。
この装備ベルトに縁があると思われる他の装備ベルトと比較してみます。(画像は上から「東ドイツ軍」「ドイツ国防軍」「ソ連地上軍」の物です)
第二次世界大戦当時の「ドイツ国防軍・装備ベルト(複製品)」と並べてみました。
素材の違いを除けば外見は非常によく似ています。
箱型バックルに国家章を刻印している辺り、国家体制が一変されてもドイツの伝統を受け継いでいこうという軍関係者の意志が感じられるようで印象的です。
裏側から見ると構造の違いが顕著に見られます。
ベルトのサイズ調節機構は、両者で全く異なる点です。
革とナイロンという素材の違いから、ベルト自体の厚みには、だいぶ差があります。
装備ベルト端末・表面の形状です。
部品の配置には大きな違いはありませんが、金具の形状は逆になっているのがわかります。
装備ベルト端末・裏面の形状です。
革製品は見た目の重厚さに勝り、ナイロン製品は実用性に勝る、というところでしょうか。
「ソ連地上軍・装備ベルト(実物)」と並べてみました。
東ドイツ軍のバックルは縁を折り曲げて箱型に成形されていますがソ連軍のバックルは分厚い鉄板を湾曲させた形状で、同じバックル式でも印象は大きく異なります。
一見すると相違点の多い両者ですが、バックルを裏から見ると実は構造は酷似しているのがわかります。
金具の配置、サイズ調節機構等、東ドイツ軍ベルトはソ連軍ベルトに倣った作りだと感じられます。
装備ベルト端末・表面の形状です。
両者とも、フック引っ掛け金具が設けられています。
並べてみるとデザインの近似性が強く感じられます。
装備ベルト端末・裏面の形状です。
こうしてみると、東ドイツ軍装備は「ドイツ風に味付けされたソ連軍装備」という印象を強く受けます。
社会主義体制のドイツとはこうなるのだな、と改めて実感しました。
【商品紹介】
「東ドイツ軍実物弾帯 ベルト」…東ドイツ軍実物です。