日本陸軍の「濃緑色防暑襦袢(のうりょくしょくぼうしょじゅはん)」です。
今回紹介するものは、海外製の複製品です。
防暑襦袢は太平洋戦争で広く用いられた防暑被服ですが、密林地帯での迷彩効果を考慮して濃緑色の物も作られました。
記録映像では昭和十九年(1944年)初頭の東部ニューギニア戦線での着用例をはじめ、同年後期にはフィリピン戦線での「薫空挺隊」の着用例、更に昭和二十年(1945年)沖縄戦において投入された「義烈空挺隊」での使用が確認できます。
この複製品は現存する実物および従来の複製品と異なり、襟・服共に同じ布地で作られています。
本来は襟部のみ、夏衣と同じ厚生地綿布で作られていますが、このような仕様が存在したのか、単に不正確なレプリカなのかは判断しかねます。
白い化繊糸で縫製されている為、濃緑色の生地と縫い目の色味の違いが良いアクセントとなっています。
実物ではカーキ糸で縫製されている物が多いようで、比較すると縫い目が目立ちすぎの作印象はありますが、概ねイメージを損ねない程度の再現度といえそうです。
開襟を前提とした作りですが、ボタンはあるので襟を閉じる事も出来ます。
折襟の状態です。
軍衣を着用する際には、閉じた状態にしたものと思われます。
両胸には貼り付け式のポケットが設けてあります。
ボタンはプラスチック製です。
実物ではベークライト樹脂製ボタンが多く見られるため、それらを模した物と思われます。
末期の製品では代用素材の木製や陶器製のボタンも使われていました。
日本軍の防暑被服に共通する特徴として、脇の下に開口部が設けてあります。
ボタンを開ける事で通気性を高める作りです。
袖は七分丈で、涼しく着用できるよう工夫されています。
適正サイズの場合、着用すると手首が露出する程度の長さです。
裾は大きく開くので、風通しは良さそうです。
ただし、日本軍では襦袢は軍袴にたくし込む、タックインで着用します。
正面のボタンは3か所で留めるように作られています。
内側の様子です。
脇下開口部に、補強の縁取りがされています。
防暑襦袢背面の様子です。
色の違いを除いて、カーキ色の防暑襦袢となんら変わりはありません。
両襟に階級章を取り付けた状態です。
直接的なデザインの影響は与えていないと思いますが、濃緑色と襟章の緋色の組み合わせは、ベトナム人民軍の「K58軍服」を彷彿とさせます。
こちらは略装における階級章の取り付け例で、片側のポケット上部に、1個のみを取り付けています。
軍衣を用いず、襦袢のみ着用する場合、このような取り付け例が広く用いられていました。
こちらも略装の取り付け例ですが、兵士個人や部隊単位で手作りされた、取り外し容易な階級章台座を用いた場合です。
端切れ布を利用して、このような台座を作り、利便性を高める工夫がしばしば見られました。
【商品紹介】
「複製品 日本陸軍 南方用濃緑防暑襦袢」…記事中の七分袖防暑襦袢は見つかりませんでしたが、半袖の濃緑色防暑略衣はAmazonで購入できます。