およそ軍装趣味をある程度嗜んでいればどこかで必ず触れるレベルでメジャーな装備品(断言!)の、中国人民解放軍「56式自動小銃用チェストリグ」、油断しているといつの間にか増える装備品ですが、またひとつ入手してしまいました。
今回紹介する個体は、56式チェストリグの中でも初期生産型の特徴を持つ物になります。
メジャーな流通品との大きな違いはショルダーハーネスのサイズ調節部分で、金属製のコの字型金具が使われています。
1960年代全般の、文革期人民解放軍やベトナム戦争当時の南北ベトナム共産軍装備に一番似合うモデルですね。
生地は丈夫な幌布製で、色味は古い装備に特徴的なカーキグリーン(土黄色)です。
チェストリグを着装した際に使用する腰紐は現行品に通ずる板紐製です。
チェストリグ背面の様子です。
生地に直接タグがスタンプされています。
制式名称「五六式7.62mm短機関銃 弾倉袋」が確認できます。
この個体は1965年製です。
ショルダーハーネスはチェストリグ背面に縫い付けてあります。
この作りは初期生産型の縫製の特徴です。
現在流通している中~後期型では、強度を高める為かチェストリグ本体内部に折り込んだ状態で縫製されているので、外見で容易に識別できます。
正面のポーチには、AKシリーズのマガジンを3本収納できます。
木製のトグルボタンをループに引っ掛けて留める、よく見慣れた構造です。
マガジンポーチは湾曲のあるAK-47のマガジンを前提に容量に余裕を持たせた作りなので、AK-74のマガジンも収納出来ます。
おかげでソビエト・アフガン戦争におけるソ連軍装備にも流用できるので、重宝しますね。
マガジンポーチの蓋は、内側が斜めに重ね張り縫製されているのが面白いですね。
マガジン収納部入り口の内側に、ビニール質の内張りがしてあるのは現行品と同様です。
マガジンポケットの左右に小型ポケットが設けてあります。
規定に基づけば、これらのポケットには小銃弾薬を梱包した紙箱を収納します。
私はダミー箱を自作して詰めていますが、実際の運用面では何も入れていなかったり、実戦では小物入れとして便利に使われていたようです。
右端のポケットのみ、底部が斜めに裁断してあります。
このポケットは、内部に更に細長い収納部があり、小銃の手入れ工具を挿し込むように作られています。
多くの56式チェストリグではここはゴム紐の輪っかが縫い付けてあるだけですが、初期型は手が込んだ作りで、ドットボタン留めの蓋まで付いています。
AKの付属メンテナンスツールがぴったり収まりました。
左側小型ポケットの様子です。
規定に基づくと、左端ポケットには銃手入れ油缶を納める事とされています。
初期型はビニール片が付属しており、油缶をくるんで収納します。
のちのモデルでは、ポケット自体が防水ビニールの内張り構造に変更されました。
1980年代製造品と並べてみました。
基本構造は変わりませんが、細部の差異が見て取れます。
一見して目立つのは色の違いですが、トルクボタンを引っかける為のループの素材も地味に変更されています。
概ね、製造年度の新しいほうが使い勝手は良くなっている印象です。
チェストリグの左端のポケットは銃手入れ油缶を収納する為の物ですが、現行品では内側が防水ビニールバ張りになっているのに対して、初期生産型では普通の綿幌布製のままです。
このタイプだと、油缶を包んで油漏れを防ぐためのビニールシートが付属しているのが通例ですが、この個体にはありませんでした。
元々付属していなかったのか、市場流通の段階で紛失したのかは判断が付きません。
ショルダーハーネスの脇の取り付け部分も、金具の形状や縫製に差異が見られます。
正面のショルダーハーネス取り付け基部も、比較して見るとだいぶ構造に違いが見られます。
新しいものの方が、耐久性や生産性を配慮した変更が加えられています。
マガジンポーチ底部にも違いがあり、初期生産型では普通に縫製してあるだけですが、現行品では厚みがあるのと、縫製位置に余裕があり、使い込んだ際に底が擦り切れるのを考慮した改良点と思われます。
着装した状態です。
「チェストリグ(胸掛けポーチ)」と呼ばれていますが、実際の着用感としては「腹巻き」と言った方が正確な気がします。
クロスする肩紐と腰紐で、身体にしっかりフィットします。
初期型特有の調節金具のおかげで、ストラップの端末が余らないのが良いですね。
人民解放軍歩兵の基本装備です。
装備品は全て負い紐で肩から提げる作りなので、1960年代~1980年代の軍装としてはだいぶ古めかしい印象を受けます。
武装は中国製AK-47である「56式小銃」です。
弾倉は3本支給されており、他に小銃弾薬入り紙箱2~3個と、木柄手榴弾4個を携行します。
当時の人民解放軍では、56式小銃は分隊長の自衛火器として配備されており、扱いとしてはサブマシンガンの上位互換との認識でした。
1979年に中越戦争で実戦を経験してからは火力不足を戦訓とし、56式小銃の配備数を増やしています。
同時に中国独自設計の新小銃「81式自動小銃」を開発しており、1980年代中期以降に主力小銃として配備が進められました。
人民解放軍では56式小銃の弾倉をフォアストックのように保持する射撃姿勢が特徴的です。
フロントヘビーな56式を構えやすくる為と思っていましたが、実銃の射撃経験者の「射撃を続けていると木製のハンドガードが煙を出すほど加熱するのでとても握れない」との証言も目にしたことがあります。
【商品紹介】
56式チェストリグは、とにかく大量に作られたためか市場流通量も多く、タイミングさえ合えば入手は比較的容易です。
ただ、価格はピンキリで、さらに最近ではレプリカも見られるようになってきています。
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