中国人民解放軍の老式装備、すなわち軍緑色の上下にカボチャみたいな解放帽でノリンコ製AKを携えた冷戦時代の軍装において、キャッチーなアイテムである「ズック靴とゲートル」の組み合わせ、試してみたい方も少なくないのでは?
中国人民解放軍のゲートル、日本軍式に言うところの「巻脚絆(まききゃはん)」ですが、日本をはじめとする世界各国のゲートルでは若干の厚みと柔軟性のあるウールで作られているのに対して、中国製はコットン(木綿)で作られています。
綿製のゲートルは、ウールと比べて柔軟性がほとんど無いに等しく、膝下の、ふくらはぎから足首にかけての曲面に綺麗にまくことが大変難しいです。
ジッサイ、綿製ゲートルはソ連軍のゲートルや抗日戦争当時のゲートルなどのレプリカ品に見られるもので、複製品のクオリティの都合かと思っていたのですが、人民解放軍の軍用実物を複数入手した結果、実物も綿製であることは間違いありません。
単純に足首からぐるぐると巻いていく、いわゆる「タケノコ巻き」では、巻いた面の縁がびらびらになってしまい見た目が美しくないばかりがゲートル自体もほどけやすく、ふくらはぎの鬱血を防ぎ疲れにくくする、ゲートル本来の使用目的も充分に果たせません。
私も四苦八苦してみたものの、軍の教範のような資料が見つからず、日本軍と同じ巻き方をしていました。
そんな中、本当に最近になって、中国大陸の動画サイトにて、中越戦争に従軍経験のある元・人民解放軍の方が直々に披露する「绑腿(中国でのゲートルの呼称)の巻き方」を発見、遂に“正しい巻き方”を知ることができましたので、自分でも実践して紹介したいと思います。
まずは前提として65式/78式軍服および65式解放/工兵靴を着用しておきます。
膝を曲げた際にズボンが突っ張らないよう可動域をしっかり確保して、ズボンの裾のしわを伸ばしておきます。
ズボンの裾を両側から引っ張り、均等に引っ張ります。
上からゲートルを巻く際にしわにならないように、足首にしっかり密着するように抑え込みます。
ゲートルの端をくるぶしあたりを基準にしてあてがい、巻き始めます。
巻き始めの方向は左手側から右手側へ、自分から見て時計回りに巻いていきます。(両足とも同じ)
ひと巻きしたら、足に密着するようにゲートルを折り返し、更に巻いていきます。
この辺りは、日本軍と同様です。
日本軍の場合、折り返しは基本的に2回行いますが、人民解放軍では巻き終わりまで、ひと巻きするごとに毎回折り返しを行い、足に綺麗に密着するように巻いていくのが一番にして唯一の違いです。
(日本軍…1巻き、2巻き、折り返し、折り返し、3巻き以降折り返しなし)
(解放軍…1巻き、折り返し、折り返し、折り返しetc. 最後まで折り返し)
ちょうど膝下で巻き終わるように、余ったらぐるぐる巻いておきます。
思ったよりだいぶ余ってしまったので、画像よりも、もっと間隔を詰めて巻いた方が良いです。
ここまで、ゲートルがほどけない様にしっかり布を引っ張りテンションを掛けながら巻いています。
巻き終わったら、端末に縫い付けてある締め紐を巻き巻きしていきます。
締め紐を適当な方法で結んだら、余った紐を巻き込んで端末処理しておきます。
この辺りは日本軍式で良いと思います。
ゲートルを巻き終わったら、解放靴をゲートルの上に被せるようにして、靴紐を締めます。
個々も今回初めて知ったポイントで、日本軍では編上靴の上からゲートルを巻くのですが、人民解放軍では逆で、ゲートルの上から靴を履く感じになるんですね。
ちなみに、解放靴の丈の短い点、カンフー靴タイプの解放靴の場合など、靴とゲートルの隙間から靴下が見えてしまうような状態になる場合がありますが、実際の記録写真でもそうなっているので問題ないです。
完成!
撮影は殆ど初挑戦のため、見た目はまだまだガタツキがありお恥ずかしい限りですが、若干慣れてきた現在では、かなりいい感じに巻けるようになりました。
やはり、軍装品にはその構造に見合った使い方が定められているのだなと、改めて勉強になった一件であります。
↑こちらに、動画版もUPしておりますので、是非参考にしてみてください。
なお、ゲートルは両足とも、「左から右へ」巻いており、「内側から外側へ」シンメトリーに巻いていく日本軍とは、巻き始めの向きも異なります。
今回もご覧いただき、ありがとうございました!
【商品紹介】
綿製ゲートルの流通は流動的で、入手難度はその時々の状況によります。
現在は下記のレプリカ、代用品が手に入ります。
「日中戦争 国民党軍 脚絆 ゲートル」…PLA実物とほぼ同型の複製品です。
「朝鮮戦争 中国志願軍 脚絆 ゲートル 緑」…同じく、PLA実物とほぼ同型の複製品です。
「NOBONU 旧日本陸軍 ゲートル2本組 巻脚絆 ネームタグ付き (カーキ)」…日本軍のゲートルのレプリカです。素材がウール織ですが、実用性では断然こちらのほうが使いやすいです。