陸上自衛隊の「旧迷彩作業服」です。
旧迷彩という呼称は、現在の俗称であり、この服の現役当時には単純に「迷彩作業服」、のちには「戦闘服」とも呼ばれていました。
この迷彩作業服は1970年頃に採用され、まず空挺部隊、次に普通科その他へと順次装備されていき、1970年代を通してほぼ全隊員に行き渡ったようです。
1980年代には通常訓練及び普段着として「OD作業服」、大規模な演習時(もちろん有事も含む)には旧迷彩といった使い分けがなされていたようです。
裏地は灰緑色です。
迷彩作業服のデザインはOD作業服とほとんど同型です。
OD作業服同様、脇の下には開口部が設けられており、通気性を考慮した作りになっています。
日本陸軍の各種軍衣にも見られる特徴です。
上衣には胸ポケットが2つあり、フラップは隠しボタン式です。
見ての通り、容量は少なく、持ち物を運ぶにはもっぱらズボンのポケットを使う事になります。
襟は折襟式で、前あわせはジッパー式です。
この辺りのデザインもOD作業服そのままです。
なお、取り付けてある階級略章及び名札は1984年以降に採用されたサブデュードタイプです。
襟の裏側にはボタンがあり、立ち襟型にする事が出来ます。
立ち襟状態にする事で、首を擬装する事、風を防ぎ防寒性を高める事が出来ます。
肩のエポーレットはボタン留めで、吊帯を通した際に不意の脱落を防止出来ます。
なお、この迷彩作業服は駐屯地の売店で販売されていたPX品のひとつで、「ノーアイロン」と呼ばれるテトロン製生地の物です。
質感がすべすべした化繊製で皺になりにくく、ノーアイロンと呼ばれているのですが、可燃性で容易に燃え溶けてしまうため、自衛隊内で使用禁止措置が取られたと聞いた事があります。
袖はボタン留め式です。
ボタンは2箇所あり、絞りを調節できます。
一番絞った状態です。
迷彩作業ズボンです。
迷彩柄の為にディテールが分りづらいですが、やはりOD作業服と同じデザインです。
背面も同様です。
ノーアイロンタイプなので、ビニロン製のOD作業服と比べても、皺が目立ちません。
前合わせはボタン留めです。
ズボンベルトは服と共生地の迷彩柄布製で、デザインはOD作業服用と同型です。
なお、ベルトは付属していなかった為、官品仕様のビニロン製ベルトを別途調達しました。
背面の様子です。
幅広のベルトループもOD作業服と同様です。
ズボンを側面から見た所です。
膝の辺りに当て布で補強がしてあります。
カーゴポケットはズボンベルトに近い、高い位置にあります。
なお、画像はありませんが空挺隊専用服では落下傘装備時に干渉しないようにポケットの位置がもっと下に移動させてあります。
カーゴポケットはマチがつけてあり、なるべく容量が多くなるよう工夫されています。
フラップはボタン1箇所で閉じる仕様です。
迷彩パターンは同時期の米軍のリーフパターンを参考にしているようです。
そして特徴的なのが迷彩の色調で、基本色が灰緑色で、脱色・退色が進むと水色に近くなっていきます。
米軍のウッドランド迷彩などを見慣れた人間からすると、とっぴな色調に思えますが、マニア間ではおおむね「熊笹迷彩」と通称されるように、北海道に多く自生している熊笹によく溶け込む色調なのだそうです。
それゆえ、時に北海道専用迷彩などと呼ばれていたのを記憶しています。
また一説には、これは一種の「都市迷彩」である、という話もありました。
すなわち、灰緑色に茶色の混じった迷彩柄は、高層ビルの瓦礫にアスファルトが抉れて表土が露になった状態に良く合う、というわけです。(あくまでジョークの類)
こちらは大昔に軍装品店で入手した官品です。
払い下げ品の為、かなり使い込まれくたびれています。
処分の際に裂かれたものか、胸ポケット部分に補修跡があります。
迷彩柄はだいぶ退色していますが縫製はしっかりしており、ビニロン製の布地の質感が官品らしさにあふれています。
色の独特さは世界有数の旧迷彩、これが現役の時代にはお世辞にも格好良いとは思えませんでしたが、完全に過去の存在となった今、軍装趣味の視点では大変魅力的に思えます。
【商品紹介】
「陸上自衛隊 志藤商会製 熊笹迷彩 作業服上下」…PX品の上下セットです。