アメリカ陸軍が第二次世界大戦を通して使用した背嚢「M1928ハバーサック」です。
本品はアメリカ製の精巧複製品です。
ハバーサックの採用は古く、第一次世界大戦当時には「M1910ハバーサック」が使われていました。
その後、戦訓を取り入れストラップの連結方法や金具の形状を変更した改良型の「M1928ハバーサック」が制式化されました。
ハバーサック本体はぺらぺらの布地にストラップが縫い付けられたようなつくりです。
【ハバーサック組み立て手順・その1】
ハバーサックが各国軍の背嚢と決定的に違う点は、収納物を「詰める」のではなく「包む」という構造にあります。
【ハバーサック組み立て手順・その2】
まず内容物を並べます。
本来は上部にタオルで包んだ「洗面用具一式」、その下に「Cレーション(缶詰)」を並べて包むのですが、私は薄手のブランケットを折りたたんだ物を詰め物として代用しています。
【ハバーサック組み立て手順・その3】
次に内容物を包み込むように固定していきます。
まず、下側の布で包みます。
【ハバーサック組み立て手順・その4】
次に右側の布で覆いつつ、3箇所のストラップを中央のループに通します。
【ハバーサック組み立て手順・その5】
そして左側の布で覆い、ストラップを金具で連結固定します。
【ハバーサック組み立て手順・その6】
最後に上側の布で覆い、下部のストラップ1本を金具で連結固定します。
これでハバーサック本体は完成状態となります。
ハバーサック上面にはダブルフック用鳩目があります。
ここには「Tボーン・ショベル」が吊り下げられます。
また、サイドのストラップには「ミートカン・ポーチ(食器)」を連結します。
ハバーサック裏側です。
両肩のストラップから二股に分かれたストラップの金具と、下部に縫い付けられた2箇所のストラップの金具、この4点をベルトに連結して装備します。
丁度、ハバーサックがサスペンダーの役割を兼用するように作られています。
【ハバーサック組み立て手順・その7】
ハバーサックの上部には「M1928ミートカン・ポーチ」が連結されます。
【ハバーサック組み立て手順・その8】
ミートカン・ポーチは画像の要領でハバーサックの2箇所のストラップを金具に通して固定します。
こちらがミートカン・ポーチです。
ミートカン・ポーチの中には「メスキット(食器)」を収納します。
ミートカン・ポーチの内部には、フォーク・ナイフ・スプーンを収納するポケットがあり、このポーチで食器類をひとまとめにして携行出来るように作られています。
【ハバーサック組み立て手順・その9】
次にハバーサック側面の銃剣吊り用鳩目に、銃剣を連結します。
画像の銃剣は「M1905E1バヨネット」です。
【ハバーサック組み立て手順・その10】
今回は第二次世界大戦中期以降、ヨーロッパ戦線ではノルマンディー上陸作戦時に普及していたブレードの短い銃剣を吊っていますが、本来はブレード長の長いM1905バヨネットを取り付けるために設計されている為、鞘を通すループから銃剣が外れやすく、ピストルベルト側に吊り下げる場合も多かったようです。
【ハバーサック組み立て手順・その11】
ハバーサックとミートカン・ポーチの隙間には「M1910イントレンチングツール・キャリア」を連結します。
【ハバーサック組み立て手順・その12】
通称「Tボーン・ショベル」とも呼ばれるこのショベルは、折畳式ではありませんが、柄は短めに作られており、思ったほどかさばらず携行出来ます。
あとはストラップをカートリッジベルトもしくはピストルベルトに4箇所連結すれば装備完了です。
完全軍装の際には、更にハバーサック下部に「パック・キャリア」を追加し、「ブランケット(毛布)」や「ポンチョ(雨具)」を「携帯天幕(テント)」でくるんで連結します。
季節によっては更にオーバーコートを丸めてロール状にしてハバーサック上部に紐を使って括り付けます。
以上のように、取扱いが大変わずらわしい上に持ち運べる荷物の容量が少ない為、兵士には不評でした。
ハバーサック着用状態・正面です。
多くの場合、歩兵にはサスペンダーが支給されなかったため、単にサスペンダーの代用として中身の入っていないペタンコの状態のまま背負われている様子も良く見られます。
ハバーサック着用状態・右側面です。
陸軍では後継として、既に海兵隊が採用していた「モデル1941パック・システム」を参考に開発した「M1945フィールド・カーゴパック&コンバットパック」を開発しますが、その支給は遅れ、第二次世界大戦中には殆ど支給されていません。(本格使用は1950年の「朝鮮戦争」から)
ハバーサック着用状態・背面です。
組むのは面倒ですが、着用時には案外フィット感は良好です。
なお、陸軍では太平洋戦線向けに「ジャングルパック」を開発していましたが、こちらも兵士達に不評であまり普及しなかったようです。
ハバーサック着用状態・左側面です。
銃剣を鞘から抜くには結構きつい体勢になってしまいます。
リュックサックとしては汎用性に問題のあるハバーサックですが、他国に見られない独特のデザインは軍装趣味的には大変魅力的であり、第二次世界大戦当時の一般的な米陸軍歩兵の軍装再現には欠かせない逸品です。