アメリカ陸軍の「M1910イントレンチングツール&キャリア」です。
画像の物は本体・カバーともにアメリカ製の複製品です。
M1910の名称が示すとおり、第一次世界大戦から使われている装備品で、外見から通称「Tボーン・ショベル」とも呼ばれます。
ショベル本体は可動部が一切無く、シンプルながら頑丈な造りです。
さすがに旧式化が憂慮されたのか、第二次世界大戦中期には折畳式の「M1943イントレンチングツール」が採用されますが、終戦までに全兵士には行き渡らなかったようです。
また、ショベル自体も折畳式のM1943はM1910と比べるとかなり重く、空挺部隊ではあえて旧型のTボーン・ショベルの方を好んで使用したという話も聞いた事があります。(M1910の柄を短く加工して携行したようです)
木製の柄の先端は握りやすいようT型になっており、Tボーンと呼ばれるゆえんとなっています。
このT型の握り手のおかげで、単純な木柄の各国軍ショベルと比べても、扱いやすいです。
木製の柄の両端は鉄製の鋲でカシメてあります。
ショベル全体をODのペンキで厚塗りしてあり、実物の風合いをよく再現していると思います。
ショベル先端は全体にざらつきのある質感です。
複製品は素材が軟鉄で焼き入れ処理もされていない為、あくまでディスプレイ用で実用は出来ません。(無理に使うと欠けたり、曲がったり…)
金属の柄の部分に「US」の刻印が再現してあります。
ショベルは適度に湾曲加工されており、戦場では塹壕堀りや土嚢造りに活躍したものと思われます。
「M1910 イントレンチングツール・キャリア」はカーキ色のコットン製です。
同時期の各国軍ショベル・カバーと同じく、ショベル先端を覆うタイプで、柄は露出した状態になります。
裏面にはダブルフックが付いており、アイレット(鳩目)のある各種装備品に取り付けることが出来ます。
カバーは袋状になっており、ショベルを突っ込んだ後、柄の部分にストラップをクロスさせてバックルで留めます。
この保持の仕方は日本陸軍の円匙覆いを思い出します。
通常は、「ハバーサック(背嚢)」に装備するのが一般的な携行方法ですが、背嚢への装備縛着量が多く余裕が無い時は弾帯に吊るしたり、X型サスペンダーのアイレットを使って背中に背負った戦場写真も見たことがあります。