ベトナム人民軍の現用装備である「リュックサック型背嚢」の実物官給品です。
ベトナム人民軍では以前から同型の背嚢が使用されていますが、旧型装備が濃緑色であるのに対し、現用品はリーフパターン迷彩柄で作られているのが外見上の特徴です。
リュックサック型の背嚢の起源は古く「ベトナム戦争」において中国から送られた援助物資にさかのぼることが出来ます。
中国からの援助は小銃・機関銃から戦車・航空機に至るまで多岐に渡りますが、特に被服や食料・救急用品等の消耗品の多くを支援されていました。
ベトナム向けの中国製装備品は、当時の中国人民解放軍とは異なる、ベトナム人民軍向けに専用デザインで製造されたアイテムも多く、このリュックサック型背嚢も中国本土での使用例が見られず、専用設計のいわゆる「援越装備」のひとつと考えられます。
容量が比較的多い上に扱いやすく、腰回りの装備品に干渉しづらいデザインはベトナム兵にも好評だったようで、中国製に加えてベトナム国産の模倣品も多く見られます。
ベトナム戦争後もほぼ同じデザインのまま製造・支給が続けられた為、時代や支給先によって細かなバリエーションが見られます。
今回紹介する背嚢は、2007年に制式採用された「K07迷彩服」に合わせて迷彩柄で製造された物で、現在ベトナム人民軍陸軍で使用されている現用装備です。
同じベトナム人民軍でも、海軍や空軍ではデザインは変わらず、それぞれに専用の迷彩柄で作られた背嚢が使用されています。
リュックサック内部の様子です。
下着や予備の靴、日用品等を詰め込むには充分な容量があります。
内部は迷彩生地の裏地のライトグリーンですが、底面のみ迷彩色の表地が使われています。
内側に、製造工場のタグが縫い付けてあります。
タグ表記から、2014年製とわかります。
リュックサックの袋の口は、紐が通してあるキスリングスタイルです。
ナップザックのように、紐を引っ張って口を閉じます。
留め具は無い為、紐を手で結んで固定します。
リュックサックの蓋の形状です。
裏面はライトグリーン単色です。
蓋は、2本の長いストラップで閉じられます。
板紐で作られたストラップを、金属製バックルに通して固定します。
リュックサック背面の様子です。
リュックサックの背面、背中に当たる部分には、スリットポケットが設けてあります。
ポケットの生地は、裏面がビニール質の防水加工がされています。
この構造は、中国製援助物資からそのまま引き継がれたもので、ベトナム戦争当時の中国製背嚢でも同様の防水素材が使われていました。
リュックサックには3個のポーチが設けてあります。
画像は中央のポーチです。
3個のポーチの中では一番容量が多く、映像資料では飯盒の収納に使われています。
両側面には縦長のポーチが設けてあります。
容量も相応に確保されており、片方に水筒と茶碗、もう片方に洗面用具(ハブラシ・ハンドタオル等)を収納します。
中央のポーチの蓋は金具で固定しますが、両側面のポーチの蓋は紐で結ぶ作りです。
両側面ポーチの近くに、板紐が縫い付けてあります。
この紐は、官給品のサンダルを結び留める為の物です。
リュックサック底面の形状です。
底面には板紐製の結び紐と、リングが設けてあります。
携帯ショベルやつるはし等の工具を携行する為の構造と思われますが、この部分も中国製背嚢由来のデザインです。
リュックサック全体像です。
ベトナムの軍人、元軍人のYoutube投稿・解説動画によると、各部のストラップや紐は、邪魔にならないよう端末処理するそうです。
私も、解説動画を参考に板紐を纏めてみました。
ショルダーストラップは長さ的にだいぶ余るので、ぶらぶらさせないよう端末処理されています。
画像は普通にサイズ調節した状態です。
バックルの隙間にストラップ先端を通しています。
そのまま引っ張ります。
再度、ストラップを折り返してバックルの隙間に通します。
適当な長さ位置まで挿し込んでおきます。
このような状態で背負ったり、持ち運んだりしているようです。
この板紐は、リュックサックを背負った際に腰に回して結び、リュックサックが左右に揺れないように体にフィットさせるための物です。
この腰紐も、不用意に引っ張ったり引っ掛けたりして破損しないよう、纏めておきます。
適当な長さ位置を決め、指に引っ掛けて折り返し、ぐるぐる巻いていきます。
指を引っかけていた輪っか部分に、板紐の先端を通します。
そのままぎゅっと引っ張れば、端末処理の完了です。
先の要領で、リュックサック各所の板紐を纏めていきます。
しっかり端末処理する事で、統制の取れた軍隊らしさが再現できます。
リュックサックの着装状態です。
迷彩服と柄が同じなので、よく馴染みます。