日本陸軍で明治31年(1897年)に制式化された水筒です。
水筒本体はアルミ製で、革紐でたすき掛けして携行します。
制式化当初は艶消し黒塗装でしたが、明治38年に茶褐色に変更されました。
昭和5年(1930年)に「昭五式水筒」が制式化した後は、「旧式水筒」の通称で一部で使用が続けられました。(ストラップを綿製に変更した物が並行して使われていようです)
旧式水筒の複製品は、今まで見たことがありません。
水筒の実物は、決して多くはないですが、流通しています。
その多くはストラップを欠損しているか、あっても状態の悪いものが殆どです。
さいわい負革の複製品は存在するので、着装に際しては両者を組み合わせて再生可能です。
実物中古の水筒本体と、中田商店製負革を組み合わせています。
複製負革はサイズも正確で、しっかり組み合わせられます。
実物と言っても、軍用品とほぼ同型の民生品があるようで資料として扱うには判別が必要ですが、軍装合わせには問題無いでしょう。
旧式水筒の特徴は徳利のような細長い形状で、実際「トックリ水筒」と通称されています。
全体の印象は筒状で、のちの丸みを帯びた水筒とは随分と印象が異なりますが、もっぱら技術的な理由によるもののようです。(楕円形状を大量生産する能力が無かった)
なお、更に古い時代にはガラス製水筒を牛革で覆った物が使われていたようです。(時期的に日清戦争で使われたのはガラス製水筒と考えられます)
蓋はコルク栓式で、時代相応の造りと言えます。
ゴム栓に比べると経年劣化していることが多く、実用には堪えないと思われます。
負革は複製品ですが、再現度は高いと思います。
茶革製の肩紐は幅が細めで、蓋の固定にも使われます。
汗と水筒の水で濡れる事もあり、この細い負革では耐久性に不安が残ります。
当時の実物が、軒並み保存状態に難アリなのも納得できる仕様です。
水筒本体、複製負革と地道に揃えていった一品ですが、出来れば気兼ねなく実用可能な複製品の登場に期待したい所です。