中国人民解放軍で広く使われていた「65式外腰帯(装備ベルト)」です。
「65式」は、従来の「55式外腰帯」や「58式武装帯」にかわり採用された装備です。
採用意図としては、「65式軍服」同様、階級制度に廃止に伴う華美な装飾性の排除のため、“八一星章”のレリーフ刻印を削除したデザインとなっています。
「65式」には幌布製と人造革製の2種類があり、普及状況としては採用初期から1970年全般までは幌布製の着用例が多く、1980年代以降はほとんど人造革製のみが目立つようです。
両者の違いはほとんどベルトの素材のみで、バックルは共用なので、単純に技術開発が進んで人造革が供給されるようになった結果、取って代わられたという時系列だろうと推測されます。
バックルのデザインについては、過去の資料に基づくと、士兵クラスには無印の物、軍官クラスには星のレリーフのみ追加された物が支給されたと説明されています。(※人民解放軍の情報資料は近年オリジナル資料で得られる情報が増え、日本国内の定説が覆される事も少なくない為、この解釈も間違っている可能性があります)
ベルトのサイズ調節は、折り曲げ位置と遊環による固定で行います。
バックルは士兵(下士官兵)用とされるタイプで、まったくの無地です。
バックルの裏側には、ベルトと同素材の保護タブが付けられています。
ベルトの裏側は、さらっとした肌触りのつや消し素材で、ミルクティーのような色です。
バックルの裏側には、「1978年製・3623工場」の刻印が確認できます。
こちらは軍官(士官)用とされるタイプです。
士兵用と比べると、バックルに星章レリーフがあるのが違いです。
バックルの星章は、55式時代のデザインから、“八一”を取り除いた物です。
この65式ベルトは1990年代に中田商店経由で流通していた物ですが、87式ベルトと比べると厚みが無く、経年でベルトの端がよれてきています。
また、バックル裏に保護タブが付いていないのも特徴です。
個体差によるものかもしれませんが、1990年代に日本国内で流通していた物はすべてこのような特徴があったように思います。(複数所有してましたが、全てこの仕様でした)
バックルの裏面には、「1967年製・3523工場」の刻印があります。
ベルト裏面には、判読しづらいですが、「士兵外帯・197?年製」のスタンプが見られます。
最近入手した65式ベルトと比較してみました。
並べてみると、バックルの引っ掛け部分に差異が見られます。
ただ、製造者の手癖の範疇の個体差のようにも感じられます。
バックルのタブの有無も画像のとおりです。
ベルトの厚みも、重ねてみると購入時期の古い方の薄さが目立ちます。
こちらは、「65式幌布外腰帯」です。
ベルトの素材が土黄色(カーキ)のコットンウェッブ製です。
ベルトはかなり頑丈で、手にとって見た感じでは、人造革製より耐久性がありそうです。
ベルトのサイズ調節は折り返した幌布ベルトを金具で固定します。
サイズ調節金具はバックルと同じ金属製です。
ベルトが硬いため、サイズ調節は非常に手間がかかります。
バックルは士兵用とされる無印の物です。
幌布製ベルトで軍官バックルの物は見たことがありませんので、もしかすると使い分けがされていたのかもしれません。
ベルトの端面は丁寧に縫い仕上げしてあります。
破損しないようにしっかりと縫製されており、人造革製のリベット留めと比べると、手間がかかりそうな作りです。
バックル裏面には、「1968年製・3528工場」の刻印があります。
こちらは改良版の「87式外腰帯」です。
1980年代に解放軍の近代化が進められ、階級制度を復活させる事となり、改めて装飾性を復活させたのがこの装備です。
名称は「87式」ですが、実際の支給開始は1989年頃からと言われています。
「65式」との違いはバックルに“八一星章”のレリーフが追加された点だけです。
「87式」は採用以来、長らく人民解放軍の装備ベルトとして運用され続けており、近年「07式外腰帯」に更新されましたが、中国民兵や大学生の軍事教練用で使われています。
構造は65式外腰帯と同じです。
人民解放軍装備に使われている人造革はビニール質の独特の物で、非常に頑丈です。
判読が難しいですが、バックル裏面には「1993年製・3521工場」の刻印が見られます。
裏面はさらっとした質感です。
各種装備ベルトを並べてみました。
基本的に大幅な変更点は見られませんが、バックルのレリーフの違いが興味深いです。