陸上自衛隊の旧型装備「携帯エンピ(シャベル)」です。
画像の物は実物中古放出品です。
この携帯エンピはかなり昔から見られる装備で、陸上自衛隊設立当時の米軍装備を模範として国産された物です。
携帯エンピ本体は、米軍のM1943エントレンチングツールに似た形状です。
エンピには刻印があり、製造メーカーと製造年がわかります。
この個体は1983年製です。
携帯エンピは柄の根元で180度回転して折りたたんであります。
柄は木製で、金属部品と同じ塗装がされています。
携帯エンピは、可動部を90度で固定すると、クワとして使えます。
新型の三つ折タイプ「携帯エンピ2型」と比べると、柄が長く、つくりも頑丈なので、実用性は高いです。
エンピのフチは薄く仕上げてあり、土を掘り起こす他、木の根を断ち切るのにも使えます。
エンピの可動部分は頑丈な造りで、折れる心配はなさそうです。
エンピを完全に伸ばすと、使用状態になります。
可動部もしっかり固定されます。
本品は中古品ですが、鋭角なエンピの刃先は使用感も少なく、保存状態は良好です。
自衛隊の携帯エンピと、米軍のエントレンチングツールを比較してみました。
並べてみると刃先の形状の違いがよくわかります。
クワの状態で比較してみました。
米軍の物はベトナム戦争時代のタイプで、クワの機能に加えてツルハシ機能が追加されています。
こちらは「携帯エンピ覆い」です。
素材はビニロン製で、蓋はスナップボタン付きのタブで留めます。
装備への装着機構は、ダブルフックとベルトループの二種類が設けてあります。
背嚢への縛着を前提とした構造らしく、弾帯を通すほどの幅はありません。
携帯エンピ覆いの内側もしっかりした造りです。
本品は擦り切れ等も見られず、状態は比較的良好です。
携帯エンピ覆いにはバリエーションがあり、これはタブが革製の物です。
裏側の構造は大差ありません。
革製のタブを使用したものは初期型らしく、製造年度の古い物が多いです。
この個体もですが、革タブは硬化してひび割れた物も多く、実用には適さない印象です。
陸上自衛隊では通常携帯エンピは背嚢に縛着する物ですが、背嚢なしで携行する場合は、専用のストラップを使用して背負っていました。
通称「カンタロウ」と呼ばれるこの装備は正規の物ではなく、自衛隊員が個人で製作していたそうです。
素材は自転車のタイヤチューブ等、身近で手に入る物で作られていたようで、私も聞きかじりの上方を元に製作に挑戦してみました。
使用する際は丸環と茄子環を使って柄に通し、輪っか状にしたゴムチューブを肩に背負います。
実際に使ってみると非常に安定しており実用性は抜群です。
私は製作した物は自転車のゴムチューブを利用した物で、物自体は上手く出来たのですが、いったん装備したが最後、金具の寸法を考えていなかったため、携帯シャベル覆いから取り外せなくなってしまいました。
そこで改めて2本目を製作してみました。
こちらは荷物の固定等に使用する為のゴム製板紐を利用した物で、金具もあらかじめ採寸してベルトループを通るサイズの物を使いました。
今回は取り外し可能に出来ました。
私物のカンタロウですが、本来は携帯エンピは弾帯にダブルフックで吊り下げる物らしく、米軍に習った装着方法ですが、実際に装備してみると重い上に動いた際に安定せず、腰を痛めそうな思いを味わいました。
隊員の自発的な発案で背中に背負うようになったのも納得できます。
【商品紹介】
「自衛隊1982―ユニフォーム・個人装備 (1981年)」…昭和自衛隊の個人装備の参考資料になります。