古典的人民服 ~ 中国人民解放軍 65式軍服・士兵用 (灰緑色・実物)

中国人民解放軍の65式軍服です。

この軍服は単に軍服であるのみならず、文化大革命時代の中国そのもののイメージアイコンとなった物で、日本では「人民服」と通称されたものです。

 

 

私の幼少期の中国のイメージは、「土壁の家並み」「舗装されていない道路に大量の自転車」そして、「みんな来ている人民服」でした。

現在の成長著しい“覇権国家 中国”からは想像も出来ませんが、かつては“昔ながらの暮らしを営む素朴な隣人”であり、“昔の戦争で大変な迷惑をかけてしまったので、出来る限りの償いをしなければならない”という印象だった時期があったのです。

 

 

軍服のデザインは、基本的には旧式の55式軍服と同じですが、階級制度が廃止されたため階級章は無く、代わりに平行四辺形の赤色徽章のみが襟に縫い付けられています。

 

 

装飾性は徹底して無くされており、各種兵科章もない上に、ボタンに刻印されていた星のデザインすら削除され、のっぺらぼうなボタンとなっています。

階級制度の無い時代の軍服ですが、一応、上衣のポケットが2つのタイプが一般用、4ポケットで隠しボタン式の物が指揮官用というデザイン上の区別がなされていました。

 

 

私の所有する軍服は夏服にあたり、素材は綿製です。

内張りの類はなく、ポケットも露出しています。

冬服は中綿が詰めてあるらしいです。

色は灰色がかった緑褐色と言いましょうか、ぱっと見では旧日本軍の軍服に良く似ています。

 

 

裏面のスタンプによると、1967年製造品のようです。

この軍服は中田商店で売り出された物を運よく購入できたのですが、綿製の65式軍服はなかなか入手が難しく、更に共生地の人民帽にいたっては流通しているところを見たことがありません。

土産物でよくみる濃緑色の人民帽と違い、つばの部分がジグザグに縫われていて独特の魅力があるのですが、手に入れるのは難しそうです…。

 

 

ズボンはストレートタイプの極めて簡素なデザインです。

 

 

尻ポケットはなく、本当にズボンとして必要最小限の機能のみで、生産コストを重視しているようです。

 

 

唯一、両側面に物入れが設けてあります。

 

 

前合わせはボタン式です。

ポケット付近の内張りは白布が使われています。

 

 

ズボンも、スタンプにより1967年製造品とわかります。

 

 

軍服に合わせたヘッドギアは中国人民解放軍初の、そして長らく使用され続けている「GK80A」型スチールヘルメットです。

画像の物は後期生産型とでも言いましょうか、あご紐の取り付け部分が四箇所ありますが、初期の物は二箇所のみで、単純な板紐式でした。

前面に赤星が吹きつけ塗装されていますが、中越戦争の頃は解放帽と同じ赤星バッジを取り付けた物が多く見られます。

 

 

装備ベルトは硬い綿製の物です。

1970年代まではこのタイプの使用例が多く、1980年代に入ってからはビニール製ベルトが一般化したようです。

 

 

襟章は赤色のベルベット生地(ビロードとも言う)で、通称「紅領章」と呼ばれます。

文化大革命以来、1980年代末に階級制度が復活するまで、解放軍には階級が存在しませんでした。(前線においては、各部隊・各班ごとに、多数決で指揮官を決めていたそうです)

当然、そのような大雑把な方法では近代軍の運用には到底無理があったようで、1979年の中越戦争では、命令不服従や指揮官殺害などの事件も発生したと聞きます。

 

 

襟には金属のホックがあります。

階級無き軍隊の時代を象徴する65式軍服では、それまでの八一帽章や階級章が廃止され、赤星帽章、単色襟章が用いられました。

襟章も単なる装飾と化していますが、裏地に着用者の名前や血液型の記入欄が印刷してあり、認識票の代わりとして用いられていました。(装飾品の有効利用ですね)

 

 

こちらは、1990年代に中田商店等経由で大量に流通していた「78式軍服」です。

 

 

65式軍服のマイナーチェンジバージョンで、素材を綿から化繊に変更したモデルです。

 

 

違いは素材のみで、裁断は変わらないので写真で見る限りはそれ程印象は変わりません。

 

 

65式軍服同様、私の所有する78式も一般兵士向けの物で、ジャケットのポケットは2つです。

 

 

ポケットの容量は少なく、手帳や煙草ケースを入れるのに丁度良い程度です。

 

 

ズボンのデザインも変更ありません。

78式は素材が化繊なので生地が薄くなり、見た目の印象は安っぽく感じられます。

 

 

色も鮮やかな緑色で、米軍装備を見慣れていると、軍用品らしからぬ印象を受けます。

反面、実用してみると色落ちせず布地も丈夫で、見た目に反して耐久性のある軍服です。

 

 

ズボンの前合わせはボタン式で、ベルトループが設けてあります。

 

 

尻ポケットは無いので見た目は至ってシンプルです。

 

 

65式軍服と78式軍服を比較してみました。

両者は、素材とそれにともなう色調以外はデザイン上ほぼ同型だとわかります。

 

 

【商品情報】

Amazonで流通しているのは、横浜中華街などで売られているお土産品で、本物の軍服となるとミリタリー専門店を探すしかないのが現状です。

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