今回紹介するアイテムはベトナム人民軍の階級章です。
ベトナム人民軍の階級章は、基本的に襟章と肩章があります。
制服や、作業服兼戦闘服を制服として使用する場合は、兵科章付き襟章と、階級を表す肩章を身に着けます。
「K58軍服」や「K03軍服」などの作業服兼戦闘服では襟章のみ取り付けますが、多くの場合、兵科章と階級章がセットになった複合型襟章が使われます。
ベトナム戦争以来、長らく使用されていた「K58襟章」です。
この階級章は、1958年に「K58軍服」と共に採用された物で、若干のマイナーチェンジを繰り返しつつ、長期にわたって使用されていました。
画像はベトナム戦争当時の実物で、綿製の赤色台座に黄色の線が縫い付けられた上に、ブリキ製の兵科章と星章が取り付けてあります。
裏面は緑色の綿布が貼ってあり、自由に折り曲げのきくブリキのピンが埋め込まれています。
装着は軍服の襟に糸でループを作っておき、このピンを通して固定します。
なお、階級は「陸軍歩兵 上士(曹長に相当)」です。
こちらは2008年に制式化された「K08軍服(制服)」と共に採用された「K08襟章」です。
画像は階級のみのモデルで、台座が綿製の古い形式です。
「K58襟章」との違いは金属製の兵科章や階級を表す星章が、銀色から金色へ変更されている点です。
この個体では、裏面の構造は「K58襟章」を踏襲しています。
階級は「陸軍 上士(曹長に相当)」です。
こちらは近年製造された「K08襟章」で、フェルト地の台座に金色の徽章が差し込んであります。
階級は「陸軍歩兵 少尉」です。
裏面の取り付け金具は、ヘアピン型のスライド金具を襟に通す仕様です。
このタイプの金具は「K58襟章」時代から、主に軍官(士官)用襟章に見られます。
ベトナム人民軍では、長く続く戦乱と経済的困窮を原因とした雑多な軍装品、その品質の不統一が恒常化しており、1970年代(K74)、1980年代(K82)、1990年代(K94)と規格化を試みつつも充分な成果を出せずにいました。
ようやく軍装品の規格統一と品質管理、近代化の成果として2000年代に「K03(作業服)」「K07(迷彩服)」「K08(制服)」等の各種軍装が制定され、現用ベトナム軍装備へと受け継がれています。
この襟章はベトナム人民軍の特殊部隊である「ダッコン」用の物です。
階級は「陸軍ダッコン 中尉」です。
「ダッコン」は漢字表記で「特工」、ベトナム戦争中期に編成され、各種破壊工作や偵察任務で成果を上げ、現在でも対テロ作戦も含めて運用が続けられている精鋭部隊です。
隊員の位置づけとしては陸上自衛隊のレンジャーのような精鋭であり、部隊の規模は中国人民解放軍の「特戦部隊」や、ロシア連邦軍の「スペツナズ」のような、相当規模の兵力が配備されています。
こちらは「K17迷彩服」と共に導入された「K17襟章」です。
画像は「陸軍歩兵 一等兵」の物です。
「K17迷彩服」では、襟章の取り付けにベルクロが取り入れられており、着脱が容易になっています。
おそらく中国人民解放軍の「07式作戦服」を参考にした物と思われます。
こちらは「K17襟章」の、「陸軍歩兵 中尉」の物です。
先に紹介した物は制式化最初期の物で、赤い化繊台座に黄色の刺繍がされていましたが、生産コストに難があったのか、あるいは既存部品の在庫対策か、間もなく従来の「K07」と同じフェルト台座に金属章の組み合わせに戻りました。
「K07」との識別は、裏面がベルクロかどうかで判別できます。