北ベトナム軍の戦闘帽「ムゥ・メーム」です。
今回紹介する物はベトナム製のレプリカになります。
ムゥ・メーム(以下、略帽と表記)は、ベトナム戦争の頃から「ムゥ・コーイ(サンヘルメット)」とともにベトナム人民軍で使用されていた帽子です。
裏地は暗い色の生地を使い、内張りがなされています。
内張りには汗止め等の加工は特にみられません。
アルミもしくはブリキ製の通気孔の金具が見えます。
略帽正面には、金属製の帽章が取り付けられています。
この帽章は「南ベトナム解放民族戦線」に倣い上下2色に色分けされたもので、北ベトナムが非公式に南下させた越境部隊である「南部解放武装軍」の帽章になります。
1972年頃から使われ始めたもので、攻勢に入った北ベトナム軍が存在を誇示する為に行った示威行為の一環と考えられます。
帽章はサンヘルメット用と比べ一回り小型で、取り付けもサンヘルメットのビス式ではなく、安全ピンで留める仕様です。
略帽には顎紐が取り付けてありますが、完全に装飾であり、実用上の機能は一切ありません。
レプリカ品は製造メーカーやロットによって型や色に差異がありますが、今回入手した物は濃緑色で、画像に見る実物に近い印象です。
帽体正面とつばの部分には芯が入っていますが、全体的に柔らかく、若干ヤレた感じのシルエットが、戦時中の実物に近くレプリカとしてのクオリティも満足できる物です。
帽子の側面には、金属製の通気孔が設けられています。
ベトナム戦争当時の実物画像に見られるアルミもしくはブリキ製の銀色の物で、再現度は高いです。
略帽にはサイズの調節機能はありません。
略帽を被った北ベトナム軍下士官の着装例です。
時期的にはベトナム戦争末期の北ベトナム軍越境部隊のイメージです。
着用しているのは「K58軍服」です。
ベトナム戦争当時の軍服は多くが中国の蘇州で製造された援助物資に依存していたそうで、ベトナム製よりも素材や縫製が上質で耐久性も高く、ベトナム戦争後に普及した国産軍服よりも高品質だったと回想されています。
ズボン用ベルトは、官給品は人造皮革と真鍮製のバックルベルトでしたが、着用例では鹵獲した米軍のGIベルトを使用しています。(サイゴン陥落時の画像を参考にしました)