現用ベトナム軍の「K17迷彩服」です。
従来の「K07迷彩服」にかわり、現在更新が進められています。
ベトナム人民軍の迷彩服は「軍官(士官)用」と「士兵(下士官兵)用」の区別があり、それぞれ服の素材や一部デザインが異なります。
今回紹介する物は「士兵用」です。
軍官用との外見上の一番の差異はジャケットのポケットの数で、士兵用では胸ポケット2個のみで、腰にはポケットがありません。
裾はわずかに裂きが設けてありますが、機能的な必要性はあまり感じられません。
もっぱら装飾的意図によるものと思われます。
胸ポケットは四角形のカーゴポケット型です。
「K07迷彩服」ではフラップはボタン留めでしたが、「K17」ではベルクロ留めに変更されています。
より近代的な印象で、機能性も向上しています。
カーゴポケット側面のプリーツ部分は、メッシュ素材が使われており、通気性に配慮されています。
このデザインは「K07」では軍官用にのみ採用されていましたが、「K17」では士兵用にも導入されました。
ジャケットの前合わせはボタン留め式で、ボタンは表面に露出しない隠しボタン式です。
ボタンは5個取り付けてあります。
各部に使われているボタンは、あずき色の成形色のプラスチック製です。
ジャケットの裾の最後のボタン留め位置からのまくり面積の様子です。
戦闘行動において邪魔にならない可動範囲は確保されています。
ジャケットの裏面の形状です。
士兵用の迷彩生地は中厚地の物が使われており、耐久性を重視した作りです。
製造メーカーのタグから、軍正規工場で2018年に製造された物とわかります。
襟は開襟、折り襟、両方の使い方が出来ます。
折り襟の際は第一ボタンは隠れています。
「K07迷彩服」からの変更点として、襟章はベルクロ式になっています。
襟にはあらかじめベルクロ台座が縫い付けてあり、襟章の取り付けが便利になりました。
襟章は「K17」採用に合わせて導入された裏面ベルクロバージョンです。
画像は採用当初の製造品で、綿素材の台座に黄色糸で刺しゅうされていますが、間もなく従来のフェルト地に金属製ピンの仕様に戻されました。
主に、コスト面での変更と推測されます。
左胸に縫い付けられている胸章は従来からの変更はありません。
ネームテープも同様で、ベルクロ台座に貼り付けるスタイルです。
左上腕部に縫い付けられたベトナム人民軍臂章も従来の物が踏襲されています。
肩のエポーレットは「K07迷彩服」からデザインが変更されており、ボタンは無くなり縫い付け式になっています。
開閉は効かず、完全な装飾となっています。
袖の形状も従来のデザインをほぼそのまま踏襲しています。
手首のカフス部分はカーゴポケット同様に、ボタン留めからベルクロ留めに変更されています。
着用時の利便性は向上しており、良い改良点だと思います。
「K17迷彩服」の背面形状です。
デザインは「K07迷彩服」と大差ないようです。
肩にはわずかにマチがありますが、シルエットを整える、デザイン的な要素が強いと思われます。
裾は断ち切りスタイルで、ズボンの外に出して着用するデザインです。
ウエスト付近にボタン留め式のベルトループが設けてあります。
ピストルベルトを通すに充分な幅があり、機能的です。
ジャケットの裾には、わずかに裂きが設けてあります。
これもデザイン的な意匠と思われます。
K17迷彩ズボンです。
基本的なデザインは「K07」から受け継がれています。
ズボンの裾は、ベトナム軍服ではおなじみのボタン留めにより纏める事ができます。
膝部分は、当て布による補強がされています。
ズボンの前合わせはボタン留めで、一番上に金属製の引っ掛けフックが取り付けてあります。
ズボンの裏地は灰緑色で、ポケットの袋部分は濃緑色の布で作られています。
ズボンの裏面に、製造工場のタグが縫い付けてあります。
ズボン背面の形状です。
斑点迷彩の色味のコントラストが強く、縫い目の位置が見えづらいです。
尻ポケットは一切ありません。
ズボンの側面形状です。
見えづらいですが、大型のカーゴポケットが目立ちます。
ズボン各部の様子です。
ウエスト周りの側面形状です。
ズボン両側にスリットポケットが設けてあります。
ベルトループの沿う形で、ウエストのサイズ調節バックルが設けてあります。
「K17迷彩服」には、太ももの位置にカーゴポケットが設けてあります。
これは従来の「K07」には無かった点で、機能性を考えた改良点です。
カーゴポケットの蓋はベルクロ留めとなっており、利便性も高いです。
ポケットはプリーツが付けてあり、容量が多くなる工夫もされています。
「K07」よりも確実に実用性が向上しています。
カーゴポケットの真下に裾をまくり留める為のボタンがある他、膝のあたりに折り目(マチ)が付けてあります。
ズボン裾の形状です。
ズボンには裾上げ、半ズボン化機能が設けてあります。
ズボン内部に、ボタン留め用のタブが取り付けてあります。
裾をまくって、内蔵タブをボタン留めした状態です。
軍官用ではジャケット・ズボン共に半袖化機能がありますが、士兵用ではズボンのみ固定タブ・ボタンが設けてあります。
このことから、防暑用の機能に加え、水に濡れる作業への対策かと推測しています。