中国人民解放軍の「81-1式自動歩槍(自動小銃)」です。
トイガンではなく、訓練用のゴム製模擬銃です。
「81式自動歩槍」は、1979年に開発開始、1981年設計完了、1983年から生産されました。
最初の実戦投入は1984年の中越国境紛争における「老山戦役」で、実録映像で確認出来ます。
人民解放軍では1978年に将来の小銃弾薬を5.8㎜と決定しましたが、新小銃の開発には長期間掛かることが予想された為、まず既存の旧式銃火器体系を更新するために、7.62㎜×39弾仕様の暫定小銃として「81式」が開発されました。
「81式」は開発時点でバリエーション化を想定しており、「81式(木製銃床型)」、「81-1式(折り畳み銃床型)」、「81式班用(分隊支援機関銃型)」の3種が制式採用されています。
そして生産・配備が軌道に乗るにつれて、既存の「56式半自動歩槍(中国製SKSカービン)」、「56式自動歩槍(中国製AK-47)」、「56式班用機槍(中国製RPD軽機関銃)」を一挙に更新するに至りました。
作動メカニズムは短命に終わった「63式自動歩槍」の近代化改修版とも言えるもので、同銃のピストルグリップ化、直銃床化、ライフルグレネード発射システムの追加等が主な改良点です。
見た目の印象からAKのバリエーションと思えますが、構造的にはSKSの発展型と言えます。
また、設計にあたってチェコの「Vz58アサルトライフル」を大いに参考にしたと中国側資料にありました。
この模擬銃は、折り畳みストック版の「81-1式」をモデル化した物です。
「81式」とそのバリエーションモデルは、1990年代を通して人民解放軍全軍に普及しました。
当初は歩兵部隊向けの「81式」、機械化部隊や偵察兵向けの「81-1式」と区別されていましたが、最終的には一般部隊の装備も「81-1式」で統一されたようです。
「81-1式」は、現在でも陸海空軍の二線級部隊や、人民武警で運用されているのが資料映像で確認出来ます。
弾薬は現用5.8㎜弾ではなく56式系列の7.62㎜×39弾ですが、弾薬の供給は確保されているようで、新旧の銃種が混在している様子も画像で確認出来ます。
特に現在81式系列を活用しているのは海軍陸戦隊で、これまた旧式の81式チェストリグやGK-80ヘルメットと共に訓練での使用例がいくつも確認出来ます。
模擬銃のレシーバーには訓練機材をあらわす「海陸訓模擬銃」の表示があります。
リアサイトは実銃と違い、可動部位は一切無い、ゴム製の一体成形品です。
フロントサイトのデザインは、人民解放軍銃器によく見られる、丸型のサイトガードが継承されています。
照準した際の見え方です。
実銃は手にした事が無く、あくまで模擬銃での使用感になりますが、照準器の位置が低すぎるようで、頬付け姿勢をとるのが難しく感じます。
グリップは滑り止めの溝が彫られており、AKと比べて細くて握りやすいです。
実銃ではグリップやストックは木製もしくは赤茶色の樹脂製のようです。
ストックは実銃ではサイドスイング式の折り曲げタイプですが、模擬銃では可動しません。
本来は「56-2式自動歩槍」と同型のストックですが、模擬銃では細部のディテールは簡略化されています。
バットストック部分は段があり、肩付けが安定するようにデザインされています。
ここも模擬銃ではデフォルメされて角ばっていますが、実銃では丸みを帯びた楕円形です。
ストックの付け根に、リアスリングスイベルがあります。
スイベルは金属製で、実際にスリングベルトを取り付けて運用出来るよう強度を持たせて作られています。
銃口付近は実銃の形状を比較的正確に再現してあるようで、ライフルグレネード用のバレル溝も立体的に作られています。
ガスバイパス付近は思いっきりデザインが省略されており、モデルガン視点で見るとかなり大味な処理です。
あくまで実用品としての模擬銃ならではの処理ですね。
フォアストック前部位置に、フロントスリングスイベルがあります。
リアスイベル同様、金属製の頑丈な作りです。
ボルト付近の形状も、ボルトとフレームの境目が曖昧な、ゆるいディテール再現となっています。
ボルトハンドルは手元に届いた時点でちぎれてしまっていたため、鉄芯と接着剤で修復しました。
マガジンは56式と同型のAKタイプ30連マガジンが再現されています。
着脱機構は再現されておらず、フレームと一体成型です。
遊ぶには物足りませんが、耐久性は抜群でしょう。
この模擬銃には、専用スリングベルトが付属していました。
薄手のナイロン板紐やプラ製バックル等、実銃用とは異なり耐久性は考慮されていません。
スリング両端にはフック型の金具があり、これで銃に取り付けます。
全体的に簡易な作りのスリングで、あくまで模擬銃を運搬する為だけの割り切った構造です。
付属のスリングベルトを装着した状態です。
フロントスリングスイベルの状態です。
リアスリングスイベルの状態です。
流石は訓練用品、スリングスイベルは板金製で芯が銃の内部に鋳込まれているようで、振り回してもびくともしません。
素の状態ではゴムの黒い成型色だけで味気ない為、塗装してみました。
市販の缶スプレーで、黒染め以外の部分を塗り分けただけですが、良い感じにメリハリが付きました。
スリングベルトも、実物の「56式半自動歩槍 背帯」を流用して取り付けました。
本体色はゴムの地色そのままですが、塗りわけ部分との対比でそれなりに銃らしく見えるようになりました。
バレル周辺は無塗装のままです。
ちなみに銃口は画像のようにへこみがある程度で、開口はされていません。
ボルトは塗り分けで別パーツ感を出してみました。
実銃でも、黒染めの本体に対して銀色のボルトが目立つ部分なので、良いアクセントになったと思います。
グリップも塗装により別パーツ感が出せたと思います。
塗料はホームセンターで購入したラッカー塗料なので、いずれは剥がれてくると思いますが、今のところは定着したままで大丈夫そうです。
フォアストックの開口部は、塗り残す事で再現しています。
スリングベルトは革タブが丁度良くサイズが合いました。
大味だったストックも、樹脂製パーツ部分を塗装で再現して、だいぶ印象が良くなりました。
「81-1式」に、専用の「81式刺刀(銃剣)」を着剣してみました。
「81式自動歩槍」の開発に当たり、現場では銃剣の扱いについて、「56式自動歩槍」ゆずりの折り畳み式スパイクバヨネットを推す派と、白兵戦は時代遅れとの銃剣不要派の対立があったようですが、最終的に他国の例にならって着脱式のナイフ型銃剣を採用する事になりました。
81式銃剣の着剣装置の構造は、AKMやAK-74の銃剣によく似ています。
この模擬銃では着剣装置は再現されていません。
その為、銃剣の装着に当たっては両面テープで貼り合わせるという荒業を駆使しています。