中国人民解放軍で運用されている国産設計のサブマシンガン「79式衝鋒槍(短機関銃)」の、訓連用模擬銃です。
「79式短機関銃」は1979年に設計完了し、1981年から試験生産がなされ、1983年から正式に生産開始されました。
生産は1988年~1991年が最も多く、年間3万挺生産されており、1992年までに合計20万挺近く生産されたようです。
79式は既存の「54式短機関銃(中国製PPS-43)」や「56式短機関銃(中国製AK-47)」よりもコンパクトで軽量かつ高性能のサブマシンガンとして開発されました。
開発計画自体はかなり古く、最初期は1965年に「ジャングル戦用特殊部隊向けサブマシンガン」として開発計画が立てられましたが、技術不足に加え直後に始まった文化大革命による兵器開発全般の停滞の影響を受けて、紆余曲折を経て「79式短機関銃」として完成を見るまでに、実に15年もの歳月を要しました。
生産された79式は主に人民解放軍の偵察部隊、空挺部隊、通信兵、砲兵向け、また人民武警等の治安機関に配備されました。
79式の設計はAK-47を参考に、作動方式はサブマシンガンでは珍しいクローズド・ボルト方式で命中精度に優れています。
また、セレクターのレイアウト等は意図的にAKタイプに似せてデザインされており、操作性を近づけることで兵士が操作に馴れ易いよう配慮されています。
レシーバーやストックはプレス加工を取り入れ生産性も考慮されています。
使用弾薬は「トカレフTT-33拳銃」や「PPSh-41短機関銃」でお馴染みの7.62㎜×25拳銃弾(中国名:51式拳銃弾)です。
弾倉はストレートタイプで装弾数は20発です。
発射速度は毎分1,000発で、運用部隊では「近接戦闘に有効」と評価されている一方、装弾数の少なさから「戦闘持続能力に難がある」とも指摘されています。
この訓練用模擬銃は外装はゴム製で、実銃に準じた重量にするため、中に鉄芯が鋳込まれているようです。
可動部分はトリガーと折り畳みストックのみです。
実銃では、グリップ内にクリーニングツールが収納されています。
マガジンハウジングは長く、20連マガジンを半分以上覆う程です。
これはフォアグリップとして利用する為に堅牢な作りにしてあるようです。
バレル周辺の構造です。
バレルジャケットがない為かなり細身に感じますが、模擬銃では鉄芯が鋳込んである為、びくともしません。
レシーバーの形状です。
訓練機材という純粋な実用品の為、モデルガンと比べると細部のディテール再現は甘いです。
レシーバーには「79式」の表記があります。
セレクターは上段がセフティ、中段がセミオート、下段がフルオートです。
銃本体は厚みは薄く、全体にコンパクトに出来ています。
ストックは折り畳み式で、上方に折り畳まれています。
模擬銃でもストックは可動式です。
ストックは金属製で強度も確保してあります。
折り畳まれたストックは、画像のように展開します。
ストック展開時の79式の全体図です。
フレームの薄さがわかります。
ストックの形状は「AKS-47」の影響を感じるデザインです。
試作段階では人民解放軍でも運用されていた「M3グリースガン」のようなワイヤーストックも検討されたものの、強度不足で変更されたそうです。
フロントサイトは人民解放軍ではお馴染みの円形のサイトガードを採用しています。
外装はゴム製ですが、照星部分はプラ製です。
リアサイトは、模擬銃では一体成型ですが、実銃では射程100mと200mの二段切り替え式です。
スリング取り付け金具は金属製です。
根っこは内部に繋がっているようで、破損の不安は感じません。
ボルトハンドルはゴムの一体成型です。
ゴム製ゆえにモールドが甘いですが、実銃ではもっとしっかりと突起状の三角鉄板ハンドルになっています。
トリガーは可動機構が内蔵されており、クリック感があります。
全体にモールドは甘いですが、訓練用機材だけに、照準や執銃所作は実銃どおりに操作できるので、結構遊べる印象です。
AKS-47とのサイズ比較です。
AKS-47は、中国では「56-1式」の名称でコピー生産されていました。
79式はサイズがかなりコンパクトに出来ているのがわかります。
また、銃のレイアウトはAKと同じスタイルで、AKの操作に馴れた兵士であれば、転換訓練は容易だった事でしょう。