中国人民解放軍 87式迷彩服 (実物)

中国人民解放軍(略称:PLA)の「87式迷彩服」です。

「87式迷彩服」は、人民解放軍の迷彩服としては、全軍に普及した最初の軍服です。(PLA初の迷彩服は「81式迷彩服」ですが、支給は限定的でした)

 

 

PLAでは1980年代に軍の近代化を図るため、一旦廃止していた階級制度を1989年に復活させるにあたり、新たな軍服体系を研究しました。

 

 

その結果、採用された「87式迷彩服」では、それまでの“軍服”を、“制服”と“戦闘服”に分類し、国際標準に合わせた新しい軍装を確立しました。

 

 

「87式迷彩服」はブルゾン型の戦闘服で、既存の「坦克工作服(戦車服)」、「作訓服(作業服)」や「81式迷彩服」の流れを汲む物と思われます。

ポケット位置やジッパーの使用等、細部のデザインからはフランス軍の「F-1戦闘服」の影響も感じられます。

 

 

この迷彩服は、「八七式三防迷彩戦闘服」とも呼ばれますが、この「三防」とは、“火炎”、“紫外線”、“擦過”に耐えるという意味で、これらの特徴は中国における核実験で得られた教訓が活かされているとの事です。

 

 

襟は折襟タイプで、必要に応じて開襟スタイルで着用する事も出来ます。

 

 

肩にはエポーレットが設けられており、ここに肩章(階級章)を取り付けます。

 

 

両胸にはジッパー式のポケットがあります。

 

 

米軍のような貼り付けポケットと違い、容量はあまり多くありません。

 

 

胴から腰にかけて、蓋付きの大型ポケットがあります。

このポケットは蓋の付いた袋状の部分と、斜めにジッパー式の開口部がある面白い構造をしています。

 

 

ポケットの蓋はベルクロ式で開閉出来ます。

過去の人民解放軍被服では見られなかった新機軸です。

 

 

蓋付きポケットの上層にはジッパー式の物入れがあり、ハンカチやメモ紙等の薄物を収納するのに便利です。

 

 

ジャケットの裾にはゴムが内蔵されており、ウエストへの追従性を高めてあります。

 

 

左上腕部には、ワッペンを取り付ける為のループが設けられています。

ワッペン用ループは形状・サイズも含め、現用の「07式作戦服」にも受け継がれています。

 

 

肘には、補強の当て布がしてあり、耐久性を高めてあります。

もともとが比較的薄手の素材なので、効果は高そうです。

 

 

右上腕部には、ドットボタン式の蓋の付いた小型ポケットが設けてあります。

従来の人民解放軍装備にも見られる物で、おそらくは包帯入れと推測されます。

 

 

袖にはカフスがあり、ドットボタンで手首にフィット出来るよう作られています。

 

 

前あわせはジッパー式で、素早く着用出来るよう配慮されています。

 

 

裏地は迷彩時がうっすら見える無地で、内張りは無く簡素な作りです。

 

 

裏地のポケット部分にタグ・スタンプがあり「2004年製」と表記されています。

1999年にはマイナーチェンジ版の「99式迷彩服」が採用されている事から、工場によっては新型採用後もしばらく製造が続けられた物と推測出来ます。

 

 

背面の形状はシンプルで、偽装用ループやウエストストラップ等はありません。

 

 

袖の形状です。

 

 

ゴムの内蔵された裾の状態です。

 

 

ズボンはストレートタイプで、カーゴポケット等もありません。

工夫の凝らされたジャケットと比べると寂しい位にシンプルです。

 

 

ウエスト部分にはベルトループが縫い付けられています。

両側にはスリットポケットが設けてあります。

 

 

ズボンの前合わせはボタン式です。

ボタンは「78式軍服」の物に良く似た、あずき色の樹脂製です。

 

 

膝部分には当て布がしてあり、耐久性を高める工夫が見て取れます。

 

 

迷彩ズボン背面の形状です。

 

 

尻の位置には、貼り付け型ポケットが2箇所設けてあります。

 

 

蓋はベルクロ留めで、開け閉めがしやすいように作られています。

 

 

股の部分には、丸型の当て布がしてあり、耐久性への配慮が見られます。

素材が薄い生地なので、二重に強化してあると安心感があります。

 

 

ズボンの裾は、ボタンでまとめて留められるように作られています。

私の購入した物は未使用のデッドストック品でしたが、梱包状態で既にボタンが割れた状態でした。

 

 

迷彩ズボン側面の形状です。

 

 

ズボンには尻ポケットとスリットポケット、合計4箇所のポケットがあります。

 

 

貼り付け型ポケットの雨蓋は2箇所のベルクロで固定されます。

あえてボタンを使わない所に、デザイナーの利便性への工夫が見て取れます。

 

 

膝の当て布の状態です。

同時代の他国軍服では、この位置に大型のカーゴポケットを取り付けてある物ですが、「87式迷彩服」では何も無くシンプルそのものです。

 

 

裾にはボタン留めタブがあり、足首を絞ることが出来ます。

ローカットのズック靴を多用するPLAの兵士にとっては便利な機能と言えます。

 

 

ズボンの内側は無地ですが生地が薄手なので、表地の迷彩柄がうっすら透けて見えます。

 

 

前述のとおり、購入時点で割れていたボタンの状態です。

管理が大雑把なのか、たまたま運が悪かったのかわかりませんが、泣く泣くジャンクパーツから似た形状のボタンを持ってきて移植しました。

 

 

陸軍の「87式套式肩章(階級章)」を装着した状態です。

今回紹介した「87式迷彩服」は夏季戦闘服にあたります。

冬季向けには、細部のデザインが異なる「87式冬季作訓服」があり、こちらは軍緑色単色となっています。

同様に冬季向けの軍緑色作訓帽、毛皮付きの防寒帽や防寒靴があります。

 

 

この肩章は1992年改定型で、初期の物より素材を変更し、耐久性を高めてあります。

「99式套式肩章」が採用されるまで7年間に渡り迷彩服と共に使用されました。

「87式迷彩服」は1990年代を通して順調に普及していき、PLAのイメージを“緑色の軍隊”から一新させました。

その後、1999年にはマイナーチェンジ版の「99式迷彩服」が採用されますが、中国本土でもひとまとめに「87式」とされている事が多いです。

「78式軍服」をひとまとめに「65式軍服」としてしまうのと同じ感覚ですね。

 

 

実際に着用してみると、動き易さを重視したゆったりした作りで、夏は薄手で涼しく、着丈に余裕があるので冬でも下着の重ね着で対応できるので、サバイバルゲームでも使い勝手は悪くないです。

 

 

一方、裁断上、余裕を持たせたデザインゆえに、スマートな着こなしは難しいようです。

 

 

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