この本は、戦時中の一般人の生活の中にあったであろうユートピアを紹介するという内容です。
ートピア、すなわち、戦時下でも有る所には有った贅沢品を満喫していた一部の人々の事や、軍部の元で予算を優先的に手配して貰いながらひたすら研究に打ち込めた技術者達など、戦時下においてというより、戦時下だからこその理想の生活を享受できた人々や環境も有ったんだよ、という部分を取り上げてあります。
た、結婚適齢期になっても結婚したがらず、女だてらに働きながら実家に金も入れず好き勝手に自由な生活を続けている都市部の若い女性が問題視されていたり、国家主導の結婚斡旋所(なんせ“産めよ増やせよ”の時代ですから)における、あまりにも高望みな条件を指定する母親達に頭を抱える関係者の話(例えば、折角の良縁を、家柄の“格”が違うとして破談にしてしまう傷痍軍人の母)など、戦時下でありながらも、現代の日本人と変わらないメンタリティが垣間見えるエピソードが紹介されています。
注目したいのは、これらの記述が全て戦時中の書籍のみを対象に編纂されている点で、特に戦争の意義などに、戦後のバイアスがかかっていない点が好印象でした。
著者は、様々なジャンルに造詣が深く、自身も多くの小説を発表している「荒俣宏」氏です。
マンガ「ゲゲゲの鬼太郎」の著者である「水木しげる」先生を師と仰ぐ、私の贔屓にしている作家の一人です。
p.s.表紙は戦前のフランスで描かれた絵です。
これは、やはりアレですか、今流行の「ミリ萌え」の先駆け…?
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