~いわゆるアフガンチェストリグ~ ソ連軍 リフチク・ポヤス-A (実物)

ソ連軍アフガニスタン紛争、ソビエト・アフガン戦争で使用したチェストリグスタイルの弾薬ポーチ「ポヤス-A」です。

 

 

ソ連軍の装備体系には、もともと胸掛け式の弾薬ポーチの類はありませんでしたが、アフガニスタン紛争において対手であるムジャヒディンの装備する中国人民解放軍の「56式チェストリグ」や類似コピー品が鹵獲され、その利便性が注目されました。

 

 

それらは現地で手に入る様々な素材、例えば各種マガジンポーチやRD-54空挺背嚢、余剰の野戦服を切り貼りして自作された物であり、前線の兵士からは通称「лифчик(リフチク)」と呼ばれました。

意味はロシア語で「ブラジャー」身に着けた際の見た目から、まさに女性用下着のそれを意味します。

 

 

やがて、リフチクはソ連軍正規装備として官給品が開発、各種試作品を含めて多数がアフガニスタンに送られました。

今回紹介する物はそれらリフチクの中でも後期型と呼ばれる物で、ポーチの留め具に革タブとギボシが使われているのが外見上の特徴です。(初期型はトグルボタン式)

 

 

官給品のチェストリグは、「пояс(ポヤス)」すなわちロシア語で「ベルト」と呼称されています。

官給正規品の特筆すべき特徴として、チェストリグ・スタイルのマガジン収納ポーチと、その下部に連結する小銃擲弾(グレネードランチャー)用弾薬ポーチの2種類があります。

入手した個体は実物放出品で、裏面にタグ・スタンプが確認できます。

 

 

着用時には、ショルダーストラップを腰の金具に通して身に着けます。

 

 

下部のハーネスに、前述したグレネードポーチ、通称「ポヤス-B」を連結できます。

 

 

ショルダーハーネスの基部はリフチク本体にしっかり縫い込まれており、充分な強度が保たれています。

ショルダー ハーネス は、金具を介してサイズ調節ができます。

 

 

ハーネス には肩パッドが取り付けてあり、重量負担を軽減する工夫が見られます。

 

 

肩パッドは詰め物がしてあり、ある程度クッション性があります。

 

 

下部には2本のストラップが縫い付けてあります。

 

 

このストラップは、擲弾収納用弾帯を連結する為の物で、AK-74に装着するGP-25擲弾発射器を装備した兵士向けの設計となっています。

 

 

リフチクには中央にAKのマガジン収納ポケットが3個、左右に手榴弾が入る位の小型ポケットが合計4個、ポーチの間にフレア(信号弾発射筒)を挿し込むスリットが2個設けてあります。

 

 

マガジンポーチの内側入り口付近に、ビニール素材が縫い付けてあります。

 

 

触った感じ、結構厚めのゴムシートのような素材で、防水もしくは滑り止めの為の構造と思われます。

 

 

マガジンポーチ底部は立体的に縫製されています。

 

 

携行品を収納した状態です。

 

 

中国製チェストリグと比べ、肩パッドが付属していたり、布地の質感や縫製、使われている金具の形状等、いかにもソ連製らしい雰囲気があります。

 

 

戦地では、マガジンポーチの蓋を閉じずに使用する例が多く見られます。

素早く取り出す必要がある為と思われますが、チラ見えするベークライト製マガジンが実に格好良いです。

 

 

リフチクのマガジン収納スペースは広く、合計6個収納可能です。

弾薬を装填したマガジンのことを考えるとかなりの重量になると思われ、肩パッド等の工夫がされているのも納得です。

 

 

リフチクのウエストストラップは両端ともD型の金具になっており、肩から背中にまわしたショルダーストラップを通して固定します。

 

 

この装着方式はお世辞にも使いやすいとは言えませんが、初期の製造品から後の製造品まで特に変更なく引き継がれています。

 

 

マガジンポーチの蓋は、革製タブとギボシの組み合わせになっています。

 

 

1個の収納ポーチに重ねて2本のマガジンが収納できるのが特徴です。

後期型リフチクは一般に「アフガンチェストリグ」の通称で知られていますが、実際に支給が始まったのはアフガニスタン紛争も末期の頃だったようで、実のところソ連崩壊後に勃発した「チェチェン紛争」の方が、目にする機会の多い装備品です。

 

 

両サイドに合計4個ある小型ポーチは、マガジンポーチと同じく内側にビニール質の内張が縫い付けてあります。

 

 

内部には手榴弾の安全レバーを挿し込む為のスリットが確認できます。

 

 

画像は「RGD-5 手榴弾」を収納した様子です。

 

 

小型ポーチを底部から見ると、三角形に縫製されているのがわかります。

 

 

フレア収納部の様子です。

 

 

素早く取り出せるよう設計されていますが、空のフレアの場合、軽すぎるためか容易に取り落としてしまう事があるので取り扱いには注意が必要です。

 

 

リフチクの着装例です。

徴集兵向け迷彩カバーオール「KLMK」を下着の上に直接羽織り、「ポヤス-A」と「パナーマ(防暑帽)」を身に着けた軽装スタイルです。

 

 

ソ連空挺軍を想定している為、インナーは水色縞模様の「テルニャシュカ(ボーダーシャツ)」で、武器は折り畳みストックの「AKS-74」を携行しています。

また、主に空挺軍に優先支給された、樹脂製大容量水筒を身に着けています。

 

 

アフガニスタン駐留ソ連軍兵士にしばしば見られる私物スニーカーを再現する為、当時の映像資料を参考に、雰囲気の似た市販品を購入しました。

 

 

アフガニスタン紛争では、官給品の編上げ靴がなかなか行き渡らず、戦場の風土に合わない革長靴を不便に感じた兵士が、私物のスニーカーを調達して使っている様子がよく知られています。

靴下は実物は入手出来なかった為、官給品と同じ紺色の市販品で雰囲気を再現しました。

 

 

アフガニスタン駐留ソ連軍の私物スニーカーとしては、アディダスのコピー品である「モスクワ」と言うブランドのソ連製民生品が有名ですが、その他にも同盟各国を含む様々な靴が見られます。

 

 

モスクワ・スニーカーは現在も製造されていますが、特徴的なアディダス風ロゴは使われておらず、さりとて当時品は既にコレクターズアイテムの仲間入りをしつつあるので、私は市販品のそれっぽいスニーカーを購入し、実用品としています。

 

 

スニーカーは、なるべく特徴のないシンプルな、具体的にはレトロなデザインで地味な色合いの物を選ぶと、1980年代想定でも違和感のない、使いつぶせる代用品にできます。

 

 

リフチク・ポヤス-Aを着装した様子です。

 

 

携行品を効率よくひとまとめに出来るよう、設計されているのが良くわかります。

 

 

ソ連製フレア(信号弾)の実物です。

使用済みの打ち殻ですが、結構良い値段がします。さすが実物…。

 

 

アフガニスタンで戦う兵士はフレアを常備しており、記録映像や戦争映画では、航空支援や負傷者の後送の為に信号弾を打ち上げる描写が頻繁に見られます。

 

 

アルミ製の円筒部に、タグ・スタンプが確認できます。

 

 

フレアの発射口の様子です。

使用済みの為、中は空っぽで、まるでサランラップの芯のようです。

 

 

アルミ製の円筒部にはスクリューキャップがしてあります。

端面に塗られた色はフレアの発光色を示していると思われます。

 

 

キャップを外した所です。

使用時には紐が内蔵されており、引っ張る事で中身の火薬が発火し、フレアが打ち出されます。

 

 

このフレアは使用済みの為、ご覧の通り、完全に筒抜けの状態です。

 

 

形状的には単純な物なので、コスプレ用途ならば自作するのもよさそうです。

実物は、数を揃えるには出費がかさみそうですので…(汗)

 

 

フレアを携行した兵士の着装例です。

歩兵分隊の狙撃手で、「SVD半自動小銃(ドラグノフ狙撃銃)」を装備しています。

前線に進出して戦闘する為、「6b3ボディアーマー」と「SSh-68カースカ(ヘルメット)」を着用し、中国製チェストリグまたは同型のコピー品を自費調達して身に着けています。

 

 

腰にはSVD専用のマガジンポーチを提げています。

 

 

チェストリグにはフレアや銃剣、圧縮包帯や止血帯等をぎっしり詰め込んであります。

 

 

SVDドラグノフは現代でも運用が続けられている有名な狙撃銃ですが、アフガニスタンの戦場でも頻繁に目にしますし、単純にデザインが格好良いので私もお気に入りの銃です。

 

 

KZSは本来は核戦争下を想定した装備品なのですが、実戦部隊では簡便な迷彩服として利用されていました。

KLMKと比べると2ピース・スタイルで扱いやすく、ズボンも内蔵ゴムで用意に着脱できます。

 

 

また、爆風や炎熱から肌を守る為のフードや袖の長さは、戦闘時の迷彩・擬装にも役立ちます。

既に現役を退いた装備品ですが、KLMKと比べれば、まだ市場で見かける事の多いアイテムなので、機会があれば入手する事をお薦めします。

 

 

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