中国人民解放軍(略称:PLA)のガスマスク「65式防毒面具」です。
既に旧式(中国では“老式”と呼びます)の装備品ですが、現在でも報道映像などでたまに見かける事があります。
戦場での使用例としては、ベトナムとの軍事衝突(1979~1989年)において装備している姿が確認できます。
白いゴム製の面体の左側に縦長のキャニスターが内蔵された、独特なデザインです。
キャニスターの通気口には星をあしらったデザインがされているのがいかにも中国的で興味深いです。
逆に、右側には一切、突起物がありません。
ガスマスク内部の様子です。
レンズにも曇りはなく、保存状態は良好です。
未使用品だったので、購入時はビニール袋に梱包され輪ゴムで密封されていました。
付属品も入っていました。
こちらは収納袋です。
蓋の開閉は、硬めの丸い布製部分の孔に、鼓状の樹脂製ボタンを差し込む独特の方法で固定します。
製造時期によっては、素材がナイロン製だったり、蓋留めがベルクロ式の物もあります。
構造はシンプルな綿製の袋で、底部に先ほど紹介した付属品を納めるポケットがあります。
防毒面を収納した状態です。
裏側にはベルトループがあり装備ベルトに通せますが、かなり薄手の素材なので酷使に耐える作りとは言えません。
収納蓋の開閉の様子です。
他国の装備品には見られない、独特の作りが興味深いです。
「65式防毒面」はガスマスクとしてはコンパクトな方ですが、更にコンパクトな収納バッグに納める為、かなりキツキツな状態になります。
マネキンヘッドを使い「65式防毒面」の着用状態を見てみます。
顔に対してコンパクトなサイズ感が見て取れます。
左頬に位置するフィルターは内蔵式で、取り換えが利かない構造なので、完全な使い捨て前提の作りです。
同時期のソ連製ガスマスクと違い、面体はバンドを調節して密着させます。
右頬側には突起が無く、銃を構える際に頬付けがし易いように工夫されています。
ストラップは伸縮性のあるゴムバンドで、テンションは弱めです。
扱いやすいですが、素材感から耐久性は低いだろうと予想されます。
フィルターの使用期間の間だけ持てばよいという、使い捨て前提の作りなのだろうと思われます。
面体を顔にフィットさせるストラップに加え、キャニスターを抑える為のストラップも見られます。
眼鏡レンズはワイド型で、ソ連型の円形レンズと比べ視界を確保する為の工夫が見られます。
フィルターの通気口は星型のデザインがあしらわれており、装飾性が見られるのが面白いです。
顎部分にも面体がしっかりフィットしています。
素材の色味や質感はソ連製「GP-5ガスマスク」に良く似ています。
ソ連製ガスマスクと違い、耳は露出する作りです。
実物は入手できなかったので、中国歴代ガスマスクをイラストで紹介して見たいと思います。
まずは「64式防毒面」
ソ連軍などに良く見られるキャニスター分離式のタイプです。
次に今回紹介した「65式防毒面」
そして「69式防毒面」です。
「69式」ではフィルター直結式のデザインながら、キャニスターの交換をし易く改良されています。
イラストで紹介したこれらの防毒面は、順次更新されていったという訳ではなく、使用用途に応じて使い分けられていたようで、同時期に並行して生産・配備されていました。
「65式防毒面具」の着装状況です。
防毒面具袋(ガスマスクバッグ)は、かなり貧弱な作りで使用に不安を感じますが、消耗品と割り切った設計思想なのかもしれません。
収納袋自体はベルトループのおかげで、腰ベルトでしっかり位置を固定させる事ができます。
軍装は「65式軍服」着用の、1970年代陸軍士兵装備です。
現在の人民解放軍ではイギリス軍の「S10レスピレーター」に酷似した「FMJ-08型防毒面具」が配備されており、実用品としては退役していますが、人民武警や中国民兵を含む各種訓練映像等で、現在でも使われている様子が見られます。
「65式防毒面具」の装面状況です。
未使用品とはいえ年代物なので不安でしたが、特に問題なく呼吸できます。
またボイスエミッター機能も考慮されており、しっかり声が通るので、隣の人とも普通に会話できます。
左頬のキャニスター部分がかなりの存在感ですが、全体的にはコンパクトで装着時の負担も少なそうです。
右利き限定になりますが、頬付け射撃時に邪魔になる物がないのは良い構造だと思います。
ストラップは事前にしっかり調整しておけば、素早い装面でもしっかりフィットします。