中国人民解放軍の「99式迷彩服」です。
「99式迷彩服」は、「87式迷彩服」の後継として採用された、改修・改良&コストダウンモデルです。
ただし、ミリタリー市場では両者を一緒くたに「87式迷彩服」として扱っている場合が殆どです。
軍用としては旧式装備ですが、中国本土のニュース映像では、農作業をする人や出稼ぎの工員等が、作業服として着用している姿が見られました。(現在では、民間人が軍服を着ることが禁止されたと聞きます)
「87式」では前合わせのジッパーは首下までしかありませんが、「99式」は折襟の先端まで延長されています。
完全に閉めきると立ち襟となり、風を通さず防寒効果が期待出来ます。
「99式」が普及しきった時期から見られるようになった、ジッパーを閉め切った後に折り返す折襟スタイルです。
各国兵士にも見られる、現場での “流行” のような物と思われ、現在でも「07式冬季作戦服(荒漠迷彩)」で同様のスタイルでの着用例が見られます。
両胸にはジッパー式のポケットがあります。
容量は少ないので、教範や身分証を入れるのに使われている物と推測します。
腰にはスリット式のポケットがあります。
ボタンやベルクロ等の閉じる機能はありません。
ジャケットの裾にはゴムが内蔵されており、バタつかないように工夫されています。
左上腕部にはワッペンを取り付ける為のループが縫い付けられています。
肘には、楕円形の当て布による補強がされています。
右上腕部には包帯収納用と思われる小型ポケットがあります。
ポケットにはマチがあり、容量の確保に配慮した作りです。
袖はドットボタンで留めるタイプです。
ジャケット背面の形状です。
背中はシンプルなデザインで、全体にゆったりとした裁断で動きやすく作られています。
裾のゴム内蔵部分です。
前合わせ部分はジッパー式です。
ジャケット内側の様子です。
裏面にはタグがスタンプされています。
薄く判読しづらいですが、かろうじて「1998年製」の表記が確認出来ます。
インターネットで調べた限りでは、制式名は「99式」と確認出来ますが、「最初に支給されたのは1997年の駐香港部隊」の記述もあるため、製造・支給は年式確定以前から進められていたようです。
なお、過去に刊行されたミリタリー情報誌では「97式迷彩服」との記述も複数見られます。
ズボンも、上着と同様ゆったりめのデザインです。
裾にボタンがあり、足首を絞る事ができます。
ウエストもシンプルな構造で、民生品のズボンのような印象を受けます。
ズボンには各国軍戦闘服のようなカーゴポケットは無く、スマートに見えます。
裾にはボタン留め式タブが設けられています。
人民解放軍は丈の短いスニーカー型の作業靴を多用する為、ボタン留め出来る事で裾がバタつかず便利です。
ズボン正面の形状です。
ウエストにはベルトループがあります。
ズボンのファスナーはボタン式です。
ズボンのポケット内側にタグがスタンプされていますが、薄くて判読できません。
ズボンの膝には当て布で補強がしてあります。
ズボン背面の形状です。
ズボンには尻ポケットはありません。
股の部分に円形の当て布による補強がされています。
ズボンの裾には足首周りをまとめる為のタブとボタンがあります。
迷彩服に肩章を装着した状態です。
この「99式」までは人民解放軍の階級章は肩章タイプで、後継の「07式」から襟章タイプに変更されました。
装着しているのは迷彩服と共に更新された「99式套式肩章」です。
階級は「中士」で、下級下士官に相当します。
「87式迷彩服」と比べてみました。
手前が「99式」、奥が「87式」です。
一番わかりやすい識別点はジッパーが襟の末端まで来ているどうか。
「87式」は襟にはジッパーは付いていないのですぐに区別出来ます。
袖の小型ポケット周りは、ほぼ同型で変更点は見当たりません。
ワッペン取り付けループも形状変更は見られません。
当て布やドットボタン等、袖周りもほぼ同一に見えます。
襟に続いて明確に形状が異なるのが胴ポケットです。
「87式」ではフラップ付き大型ポケットに更に斜めのジッパー式物入れがあり、かなり手の込んだ作りをしています。
一方、「99式」では縦のスリット式となり、蓋やボタン等の留め具もなく、明らかに省略化されています。
胸ポケットは形状や容量の違いは、ほぼ見られません。
ズボン正面の形状も、同一に見えます。
ズボンで大きく異なる点は尻ポケットの有無です。
「87式」にはフラップ付きカーゴポケットが設けられていますが、「99式」ではポケット自体省略されています。
膝の当て布部分は違いはありません。
ズボン裾も、ボタンやタブの形状ともに同型で変更点は見られません。
全体に、必要な部分は残しつつ、過剰と思われる部分は大胆に省略されており、製造コストを低く抑える為のマイナーチェンジとの印象を強く受けます。