中国人民解放軍の「91式単兵携行具」です。
以前紹介した初期型のように、このベストは製造時期によって改修が加えられていますが、この個体は1996年製で、もっともスタンダードな装具配置のモデルです。
91式単兵携行具は、日本国内には2000年代に入ってから中田商店経由で市場流通が行われたと記憶しております。
当時としては、従来の人民解放軍らしからぬデザインが真新しく、価格も非常に安価だったのが印象に残っています。
初見の印象を遠慮なく表現するなら「玩具のようなチープ感」で、当時所有していた米軍のタクティカルベストと比べると、どうしても安っぽい印象は否めませんでした。
現在の目で改めて細部を見てみると、しっかりとした縫製と意外に丈夫な素材感、そして米軍装備に似ているようで異なる細部デザインが魅力的に感じられます。
背面サスペンダー部分はX型とY型の中間のような構造です。
また、初期型と比べると素材に違いが見られます。
各部に使われているストラップはナイロン製です。
迷彩布地は初期型では綿製のような質感でしたが、普及型では明らかにナイロン製です。
ウエストのサイズ調節部分の形状です。
未使用品なので、ナイロン紐もまだ新品らしく艶やかです。
ベストの前合わせは2箇所の金属製バックルを引っかけて連結します。
金具は黒染めされています。
マガジンポーチの蓋を留めるバックルは米軍のALICE装備に似たプラ製です。
米軍装備と比べると少し小型で、プラ素材は若干やわらかめに出来ています。
マガジンポーチの容量は、AK-47のマガジンがすんなり入るサイズです。
91式単兵携行具は「81式自動歩槍(自動小銃)」用に開発された装備なので、AKスタイルのマガジンに対応しているのも納得です。
背面中央には、水筒ポーチが配置されています。
手榴弾ポーチは4箇所、設けられています。
手榴弾ポーチは初期型より改良されており、内側に卵型手榴弾を収納した際に蓋として使えるベルクロ式ストラップが追加されています。
91式単兵携行具の、裏面の様子です。
裏面はビニールっぽい質感の防水加工が施されています。
機能的と言えますが、この加工は経年劣化で溶けてベタベタになるので、個人的にはあまり好ましくない仕様です。
裏面には布製のタグが縫い付けられています。
未使用品なのでスタンプされた文字も明瞭で、「91式短機関銃手携行袋・1996年製」の表記が確認出来ます。
人民解放軍では、用途によって銃の種類を呼称していた為、「短機関銃」とは「自動小銃」を指す場合が多くあります。
肩当て部分はクッション材入りのパッド状になっています。
ストラップは全体に華奢に見えますが、実際に着用してみると、意外にも軽くて動きやすく、機能的な印象です。
91式単兵携行具に装備品を収納した状態です。
普及型のベストは、左右対称なデザインに変更されています。
左胸部にはマガジンポーチが2箇所、手榴弾ポーチが2箇所あります。
初期型ではマガジンポーチは全部で3箇所でしたので、普及型では弾倉の携行数が1個増えています。
背面中央には水筒ポーチが配置されています。
水筒ポーチの形状は、「65式水壷」および「87式水壷」に対応しています。
装具採用当時、併用されていた「78式飯盒水壺」は、画像の位置までしか入らない為、蓋が閉じられないので収納は無理のようです。
右胸部にはマガジンポーチが2箇所、手榴弾ポーチが2箇所あります。
初期型と異なり、左右対称のバランスの良い配置に改められています。
手榴弾ポーチには、「67式木柄手榴弾」を収納しています。
柄の無い「82-2式プラスチック手榴弾」を収納した状態です。
初期型と異なり、手榴弾ポーチの上部にベルクロ式のタブが追加されており、蓋をする事が出来るよう改良されています。
着用時の携行具は画像のような感じです。
米軍のタクティカルベストでは下部にピストルベルトの取り付け用ストラップが付いていますが、このベストには装備ベルト取り付け機能はありません。