
元自衛官の経験を生かして執筆された芥川賞作家、砂川文次さんの小説「小隊」。
評判を呼んだ原作を基に、コミカライズした『小隊』の単行本を購入しました。
原作小説は未読ですが、マンガはなかなか面白かったです。
主人公は、特別な能力を持ったタイプではなく、公務員として就職した、ごく普通の幹部自衛官です。

物語冒頭、突如ロシア連邦軍が北海道に上陸侵攻してきたという「状況」が説明された後は、しばらくは情報が少ない中、迎え撃つための陣地構築や作戦会議の様子が淡々と描写されます。
主人公含めて、誰一人「戦争」の実感のない中、いずれ来る実戦への何とも言えない心境が伝わってきます。

そして初めての戦闘、ロシア軍の戦車、兵士の姿が見えたその直後から、状況は一変します。
昨日まで顔を合わせていた同僚が死に、優秀な上官も、あっけなく死ぬ。
総指揮官すらも、司令部が砲爆撃で吹き飛んだという事後情報で語られるのみで、主人公も読者も、戦死の様子すらわかりません。

また、主人公自身も、サバイバル能力で生き残るわけではなく、「ただ運が良かっただけ」、それで戦友との生死がわかれるというリアリティを感じさせます。
圧倒的優勢なロシア軍、倒しても倒しても後退するしかない中、ボロボロになった主人公がページの最後、仰ぎ見る上空に、味方の航空自衛隊戦闘機が、反撃のために飛来するところで物語は終わります。
派手な戦闘の様子や、主人公たち小隊の活躍を描写したヒーロー的物語ではなく、戦場では誰が生き残るかなんて分からないという怖さや、全力を尽くしてなお絶望するしかない無常感の残る作品でした。

「自衛隊もし戦わば」を題材にした作品は、特に1980年代までの東西冷戦の時代に、ソ連軍日本侵攻をテーマに小説にせよ漫画・劇画にせよ、少なくない作品が作られました。
それらと比較してこの作品は執筆された時代が新しく、現代に続く平成の自衛隊と、ソ連崩壊後の、ロシア連邦軍との戦いという点に新しさを感じます。

ミリタリー好きとしては、軍装や兵器の描写が気になる点ですが、2型迷彩、防弾チョッキの形状、ロシア連邦軍のT-90戦車やBMP-3歩兵戦闘車、AK-12を携行するピクセルフローラ迷彩のロシア兵など、考証はしっかりしており、違和感なく読み進められてよかったです。
この書籍自体の評判や売り上げも良かったようで、原作にはない続編も、コミックの形で近々リリースされるそうです。
ミリタリーファンならば、一読して損はないと思います。
お勧めです!
「小隊 (漫画版)」…柏葉比呂樹さんによるコミカライズ。兵器や軍装品の描写が正確なので、変に冷めずに読めるのが良いミリタリー・コミックです。